スポーツ部活動のトラブル 勝利至上で配慮足りず


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指導者への教育も必要

 【中部】本島中部にある小学校のスポーツ系部活で今春、監督が父母全員に練習試合を連絡する際、帯同させない児童の個人名を明記して電子メールを送り、関係者から問題視される事態が起きた。
 指導者、父母、校長らで話し合い、問題の深刻化は避けられたが、長い指導歴を持つ県内スポーツ団体役員はスポーツ指導者への教育も「必要になっている」と指摘する。

 メールは実力、体力不足とみられる児童5人を名指しし、それ以外のメンバーが試合会場に来るよう連絡する内容だった。メールを受けた父母らに困惑が広がり、事態を重く見た学校が父母と監督が話し合う場を設けることとなった。
 同監督はメール送信前、児童個人に対しては練習試合に参加できないことを伝えたが、一部保護者への説明は声を掛ける時機を逸するなどし、行えなかったという。父母に対して経緯を説明し、配慮が足りなかったことを、わびたという。
 今回は保護者らの要請を受けた学校が問題解決に動き、指導者と父母の顔合わせの場を設定して、謝罪と再発防止の話し合いを持ち、問題の深刻化は避けられた。しかしスポーツの現場で指導者の不手際が起こることは今後も十分考えられる。
 小学生から成年まで幅広い指導歴を持つ、前浦添市体育協会長で県ハンドボール協会の東恩納盛英副会長は特に、小学校の段階から「勝ちにこだわる指導が目にあまる」とし「勝利は大事だが、度が過ぎると子どもは置き去りになる」と警鐘を鳴らす。また教職課程で学んでいない外部指導者が、児童生徒との接し方や体の仕組みと成長、最適な体づくりを学べる教育体系が「必要になっている」と指摘する。
 東恩納副会長によると、学校教諭と違い外部指導者は「『勝たないと存在価値はない』と自らに重圧をかける人が多い」と説明。「小学生大会で実力が劣る児童がシュートしたことに『なぜおまえが打つんだ』と怒鳴る外部コーチを見掛けたことがある」という。
 「子どもは萎縮して楽しめない」と教育力のなさに苦言を呈する。
 中学野球の関係者の話では「小学生時代、監督が勝ちにこだわるあまり、エースを多投させて、それが肩や肘の故障を招き、中・高の段階で投手を諦める子も珍しくない」という。
 日本一も多い沖縄スポーツ界。華々しい戦績と大人の情熱の陰で、スポーツを楽しめない子どもたちが増えていないか、点検が必要だ。
(普久原裕南)