広告制作 自立へ一歩 障がい者だけでNPO法人


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タッチペンでパソコン端末を操作し、広告を制作する宮城幸春さん=8日、読谷村

 【中部】さまざまな障がいがあるメンバーでつくる音楽バンド「ケントミファミリー」。音楽活動の資金を自ら造成していこうと4月、NPO法人サポートセンターケントミ(我如古盛健代表理事)を発足させた。

理事全員が障がい者で構成されるNPO法人の発足は県内で初めて。自立支援を行うほか、読谷村と北谷町に設置されている電光掲示板の広告制作に取り組んでいる。広告制作を担当する宮城幸春さん(38)は「障がいのある方々が何かをやろうと思うきっかけになりたい。企業や地域、団体の広報に対して、少しでも力になりたい」と将来を見据える。
 宮城さんは高校卒業後、水難事故に遭い、頸椎(けいつい)を骨折した。首から下はほとんど動かすことができない。広告は口にタッチペンをくわえ、パソコンの端末を操作して制作する。
 広告制作に取り組むきっかけは3年前、県内で電光掲示板を運営する「Super sign」(読谷村)の池原直(なおし)代表(48)との出会いだ。「指一本でも動かすことができれば、健常者と変わらない仕事ができる」。池原さんの言葉に奮起した宮城さんは、3年をかけてパソコン操作を身に付けた。
 これまでにチャリティーイベントや警察、地域の広報など約20本の広告を制作し、嘉手納署や地域から表彰を受けた。池原さんは「当初は人前に出せるようなものではなかった。本人の努力と、さまざまな人々の支援のおかげだ」と目を細める。ケントミの我如古代表理事(57)は「広告を作るようになって、(宮城さんは)明るくなった。できることを精いっぱいやることで、自信もついてきた」と顔をほころばせた。
 宮城さんの今後の目標は、バンド活動を中心に自然保護や慈善活動など、広報に十分な経費を回せない団体や企業の広告制作に取り組むことだ。宮城さんは「さまざまな方々の支援でここまで来られた。自分たちにできる形で活動を広げていきたい」と期待に胸を膨らませた。(当間詩朗)