男踊と女形で魅了 男性舞踊家の会


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 国立劇場おきなわ企画の第78回琉球舞踊公演「男性舞踊家の会」が8、9の両日、浦添市の同劇場で開かれた。ベテランから若手まで人気舞踊家13人が出演した。

同劇場企画の琉舞公演で、ほぼ同じ出演者で2日連続公演を打つのは初めて。1日は男踊、もう1日は女形で踊り、舞踊家の多彩な顔を紹介した。
 平田智之は初日、玉城盛義の創作「護身の舞」を披露。空手の型を取り入れた舞は気迫にあふれていた。2日目は、父であり師匠である平田行正の創作「遊(あし)び舞(もーい)」(作詞・編曲 登川誠仁)で登場。これまで行正だけが踊っていた作品を継承した。「いつになれば嫁に行けるのか」と嘆く女性をユーモラスに演じた。
 大湾三瑠は、金武良章作の「よー加那よー」で初日のトリを飾った。間を外した軽妙な振り付けは、ユーモラスでありながら気品がある。観客の笑いを誘い、手拍子が起きた。2日目の女踊「赤田風」も金武の作品だが、対照的に抑えた所作で秘めた情熱を表した。
 嘉陽田朝裕は初日、自身が高校生の時に作った「春のおとずれ」を披露した。桜の枝を持ったあどけない美童が軽やかに踊るという初々しい作品。2日目の二才踊「前の浜」は、りりしいが中性的な雰囲気もあり嘉陽田の色が出ていた。
 このほか、海勢頭あけると真境名律弘が「諸鈍」、親泊邦彦が「八重瀬(えーじ)の万歳」、佐辺良和が「トーガーニーあやぐ」「あら穂花」など、天願雄一が「湊(んなとぅ)くり節」「かせかけ」を舞った。宮城茂雄は「花風」「かぎやで風」、金城真次は「取納奉行(しゅぬぶじょー)」「揚作田(あぎぃつぃくてん)」、阿嘉修は「ゆうばんた」「まるまぼんさん」など、西門悠雅は「江佐節」「汀間当」、大浜暢明は「女特牛節(いなぐくていぶし)」「若衆出発(わかしゅたびだち)」を踊った。
 前回の「男性舞踊家の会」で約580席が完売したことから、今回は2日連続公演を試みた。しかし、観客数は合計約670人にとどまった。このうち、2日通して鑑賞したのは約40人。同劇場は観客数の伸び悩みについて、初日と2日目で演目は違うものの、出演者がほぼ同じだったため「ファンが分散した可能性がある」とみる。初日と2日目の出演者を変えて、それぞれ多彩な踊りを見せた方が効果的かもしれない。興行的な課題は残ったが、舞踊家の魅力を伝える意欲的な取り組みを今後も続けてほしい。
(伊佐尚記)

力強い「護身の舞」を見せる平田智之=8日、浦添市の国立劇場おきなわ
軽妙な「よー加那よー」で客席を沸かせる大湾三瑠=8日、浦添市の国立劇場おきなわ
自身の創作「春のおとずれ」を舞う嘉陽田朝裕=8日、浦添市の国立劇場おきなわ