性同一障がい、共生の道探る 「gid.jp 25th フォーラムin沖縄」


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「性同一性障害と社会」をテーマに開かれたフォーラム=8日、那覇市首里石嶺町の県総合福祉センター

 身体の性別と心の性別認識が異なる「性同一性障がい(GID)」の当事者団体「gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会」は8日、那覇市首里石嶺の県総合福祉センターで、「gid.jp 25th フォーラムin沖縄」を開催した。

都留文科大学や明治大学の非常勤講師を務める三橋順子さんや、会代表の山本蘭さん、山本クリニック院長の山本和儀さんらが登壇し、約60人が参加した。
 三橋さんは、性社会・文化史研究者で、特に性別越境(トランスジェンダー)の社会・文化史が専門。「いわゆる同性愛や性同一性障がいの人は、人類のどの時代・どの地域でもほぼ一定の割合で普遍的にいた。数は少ないが、特別な人でもなく、最近出現したわけでもない」と語った。
 ユダヤ教やキリスト教、イスラム教などの社会では、宗教的に存在が認められず、殺されるケースもあったとし「日本を含むアジア各地、太平洋諸島などの地域では、シャーマンといった宗教的職能、芸能の仕事、飲食接客的職能など一定の職業を負わせることで、存在が認められてきた」と歴史背景を述べた。
 三橋さんは、沖縄の新聞に掲載される死亡広告を見て「家族意識が強いと感じた。その中で性別を変えるのは、個人の問題というより家族の問題になりやすのではないか」と個人的見解を述べた。
 一方、代表の山本蘭さんはGIDの当事者は、今も社会生活を送る上で困難に直面しているとし、年金や健康保険証に性別欄があること、就労でも偏見や差別で苦労することなどを挙げ、戸籍変更では「未成年の子がいないことや婚姻していないことなどが要件。無事変更できたとしても、身分事項に裁判発行日が必ず記載され、性別変更したことが分かってしまう」と指摘した。
 国内で性別適合手術を受けた人は約3580人いるとされるが、手術可能な正式な病院は国内に4医療機関しかなく、4割が国内で、6割が海外の医療機関で手術を受けているという。
 沖縄で精神科医としてGIDの人たちと関わる山本クリニックの院長山本和儀さんは「沖縄は圧倒的にFTM(女性から男性へ)が多い。中には好意的でない人もいるかもしれないが、見えないことを見えるようにしていくことが大事」と話し、可視化することで差別や偏見をなくしていく必要性を語った。