一人で「組踊」歌三線 上間克美独演会


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別れの場面で「伊野波節」などを歌う上間克美師範(右端)=9日、浦添市のてだこホール

 野村流音楽協会の上間克美師範の独演会「組踊『護佐丸敵討』を謳(うた)う」が9日、浦添市のてだこホールで開かれた。通常は数人で担当する組踊の歌三線を、上間が一人で務めるという意欲的な試み。

2003年の独演会「『手水の縁』を謳う」から、10年ぶりに挑んだ。立方は宮城能鳳組踊研究会が務めた。
 「護佐丸敵討」は、あまおへ(玉城盛義)に討たれた護佐丸の遺児、鶴松(東江裕吉)と亀千代(新垣悟)が敵討ちをする筋立て。歌曲は延べ9曲あり、上演時間の約半分を占める。
 鶴松と亀千代が母親(石川直也)と別れる場面で「仲村渠節」「散山節」「伊野波節」と続き、親子の悲しみを表す。声質や歌唱力の異なる地謡が交代して歌うと雰囲気が損なわれてしまうが、上間が一人で歌い抜くことで観客も立方も物語に感情移入できた。上間は「伊野波節の高音や母親の落胆の表現が難しい」と話していたが、集中を切らさず歌い上げた。
 その後は、前半の豪傑ぶりから一転して酔っ払うあまおへや、踊りながらあまおへの隙をうかがう鶴松、亀千代が観客を引き付けた。地謡も安定した演奏で立方を引き立てた。
 公演後、宮城能鳳は「上間先生は自然体の発声がいい」と評価。上間は「歌える声をいかに持続できるかが課題」と話した。今回の独演会は、大城學琉球大教授が朝薫五番への挑戦を勧めたことがきっかけ。残り4演目も歌三線の独演を見てみたい。また、ほかの実演家にも同様の試みに挑戦してほしいと感じた。