民間人同乗も「公務中」 防衛省、米軍人追突で


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 【東京】東京都足立区で5月、米軍の公用トラックが自営業の男性(32)=埼玉県在住=の車に追突し重傷を負わせた事故について、トラックの助手席に民間女性が同乗していたにもかかわらず、防衛省が米軍公用車が事故を起こしたことを理由に日米地位協定上、日本の第1次裁判権が及ばない「公務中の事故」として損害賠償の手続きをしていることが25日、分かった。

一方、警視庁は本紙の取材に対し「米軍から『公務外』と報告があった」と述べ、自動車運転過失傷害容疑で米兵を送検する方針を説明。交通事故自体の処理と、損害賠償の手続きで日本側の関係当局が「公務」を使い分ける異例の事態となっている。
 防衛省地方協力局補償課は本紙の取材に対し「本来なら公務外の事故だが、米軍によれば部隊車両の管理に瑕疵(かし)があったので、損害賠償については『公務中の事故』と同等の処理をすることになる」と説明した。
 25日に都内で会見した男性は、賠償金が支払われず、経営する生花販売会社が倒産の危機に面しているとして、同日、防衛省に対して米軍と協議の上で1カ月以内に賠償金を支払うよう求めたことを明らかにした。
 一方、男性によると、事故当時に車に積んでいた販売用の花(仕入れ値約300万円)が損害を受けたが、事故後に賠償について相談した北関東防衛局の担当者は「損害を最小限にして営業を続けてください」と指南したという。男性は「以前のように満足に仕事もできない状態だ」と述べ、同局の対応を疑問視した。
 賠償金の支払いをめぐって25日に面談に応じた防衛省の担当者は「支払いには3カ月から1年ほどかかる」と述べ、早期賠償に否定的な見解を示した。