トップの演奏を共有 カノンの会・新垣安子代表


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カノンの会の新垣安子代表=琉球新報社

 クラシック音楽の愛好家らで1993年に結成し国際的に活躍する著名な音楽家を沖縄に招いて公演してきた民間団体「カノンの会」が、9月1日に那覇市の安里カトリック教会で開く村治佳織・奏一姉弟の公演を最後に解散する。新垣安子代表にこれまでの活動の意義などを聞いた。

 ―なぜ解散するのか。
 「満席に近い状態で続けてきたが、ここ数年お客さんが入らなくなった。音楽をやっていなくても、生の演奏を聞くために足を運ぶクラシックファンが減った気がする。出演料やホール使用料などの経費以外はボランティアでまかなってきたが、赤字では運営が厳しい。県内でもコンサートは増え、私たちの役割は終わりかなと思った」
 ―続けられた要因は。
 「私は幼い頃からクラシックファン。素晴らしい演奏を沖縄の人と共に聞きたいと思い、続けてきた。手紙を書くのが好きで、事務所を通して演奏家に熱意を伝えてきた。世界トップ級の演奏家は出演料も高いが、スポンサーはなかなかつかない。音楽や芸術には言葉では表せない大きな力がある。企業や行政は素晴らしい演奏を聞いてもらうことを収益面だけでなく、社会的使命と考えてほしい」
 ―演奏家と病院を訪ねるなど社会貢献にも熱心だ。
 「ホールとは演奏環境が違うが、どの演奏家も快く応じてくれた。演奏会に足を運べない人にも聞いてほしいと、ここ数年取り組んだ。演奏家にとっても心に残る経験になったようだ」
 ―印象に残る公演は。
 「2001年に世界的チェロ奏者のミッシャ・マイスキーを招いた。出演料を聞き目を丸くしたが、知人に聞けば皆『チケットが1万円を超えても聞きたい』と声をそろえた。実際、会場は満席。来場者は涙を流して拍手し、マイスキーはアンコールに何度も応えた。そんな感動的なファンと演奏家の出会いがあれば、何度も沖縄に来てくれる。公演中は忙しくて演奏を聴けないが、満ち足りた表情で帰る人々を見ると、やっていてよかったと思う」(聞き手・宮城隆尋)
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 カノンの会が主催する韓国出身バリトン歌手、キュウ・ウォン・ハンの公演が12日午後7時、那覇市のパレット市民劇場である。入場料は一般3500円、学生2500円。問い合わせは(電話)090(5733)4071。