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N・Sバレエアカデミー(長崎佐世代表)の40周年記念公演「バレエへの誘(いざな)い」が7日、宜野湾市の沖縄コンベンションセンターであった。「ジゼル」全幕で、ジゼルを演じた長崎真湖が圧倒的な表現力で生前、死後のジゼルを演じ分けた。
アルブレヒトを演じたビャンバ・バットボルト(Kバレエカンパニー・ファーストソリスト)、ヒラリオン役のバットムンフ・チンゾリク(元NBAバレエ団ソリスト、フリー)ら客演陣とともに、巧みな演技を見せた。演出・振り付けは長崎佐世が務めた。
安里友香が昴師吏功と踊り、子どもたちも出演した「ドン・キホーテ」など、多彩な演目を披露。同アカデミーの築き上げた40年の活動の一端を感じさせる総合芸術で、来場者を舞台にくぎ付けにした。
ジゼル第1幕は、心臓が弱いが踊りの好きな村娘ジゼルに、貴族のアルブレヒトが身分を隠して近づく。長崎真湖のマイムは演技だけでなく、表情や視線でも場面を語る。みずみずしい生命力を感じさせるジゼルの踊り、引かれ合うアルブレヒトとジゼルの調和に来場者を引き込む。
ヒラリオンの暴露によってアルブレヒトの裏切りが明らかになり、ジゼルは錯乱する。振り乱す髪、見えない者を追うような視線の動き、後ろ向きで剣をひきずって舞台上に円を描くように踊るなど、そのステップは狂気をはらむ。
死者となったジゼルは墓場で精霊ウィリたちに囲まれて踊る。長崎は軽やかという形容を超越するほどの柔らかい身のこなしで、実体を失い宙を漂う亡霊となったジゼルを表現。指先にいたるまでのしなやかさで来場者を感嘆させた。
ウィリたちの息のぴたりとあった群舞は、夜の墓場を包む闇や風の気配を表現し、ただならぬ空気を描き出す。命ごいするヒラリオンを躊躇(ちゅうちょ)なく葬るミルタ(玉城萌海)の、鮮やかな舞に冷徹さがにじむ。矛先はアルブレヒトにも向かうが、ジゼルは彼を救うようミルタに懇願。自身を裏切ったアルブレヒトを救ったジゼルは夜明けとともに姿を消す。息をのむ苛烈(かれつ)な駆け引きの中で、ジゼルの無償の愛の深さを印象的に描いて幕を下ろした。
クールラント公爵はパリ・オペラ座出身のジェームス・アーマー、ベルタは喜久村明理、バチルド妃は山口ちあき、ウィルフリードは赤嶺直が務めた。玉城七星、昴師が担ったペザントのパ・ド・ドゥも大きな拍手に包まれた。(宮城隆尋)