広範囲で夜間騒音 12年度 県米軍機調査


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県の米軍基地航空機騒音実態調査(2011、12年度)

 県が那覇市や与那原町など9市町村30地点に新たに設置した測定局で観測した2012年度米軍基地航空機騒音実態調査の結果が17日、分かった。飛行制限のある午後10時から翌朝午前6時までの騒音を広範囲で確認した。

調査初回の11年度から2年連続で、制限時間外騒音の常態化が確認された。12年度のうるささ指数(W値)では、環境基準の70超過はなかった。だが中城村南上原など6地点で、県が環境基準の適合目安としている65を超えた。米空軍嘉手納基地や普天間飛行場の近隣以外の本島中南部で、騒音被害が広がっている実態が明らかになった。
 米軍機の騒音や低周波音測定を続ける琉球大学の渡嘉敷健准教授(環境工学・騒音)は「基地を抱えない地域でも、騒音にさらされている実態が分かる。広大な基地を抱える県内全体を網羅する測定調査をしてもおかしくはない」と指摘。「防衛省ではなく、環境省が中立的に県内の音環境を判断する必要がある」と述べ、学校での測定を進める必要性も強調した。
 また「うるささ指数が低くても心理的な影響はある。基準値の条件をより厳しく見ていくべきだ」と話した。
 制限時間外飛行の平均発生回数が最も高い地点の内訳は、中城村和宇慶で24回(夏季、調査24日間)、浦添市前田で25回(秋季、調査28日間)だった。最大ピークレベルは、夏季が北中城村荻道で99・7デシベル、秋季が浦添市内間で102・8デシベル(いずれもほぼ電車通過時のガード下に相当)。普天間飛行場の発着機航路真下にある宜野湾市上大謝名の騒音に並ぶ数値となった。1日当たりの最多騒音発生数は、宜野湾市赤道で38・5回(秋季)。
 11年度夏期調査では北中城村荻道など3地点でW値70を超えた。これらの地点は国の防音工事区域(W値75以上)ではないが、ほぼ匹敵する騒音レベルとなった。
 同調査は2年で終了し、結果は県のホームページで公開されている。県環境保全課担当者は「数字上は基準を満たしていても、住民が受ける騒音の実感は違う」と受け止めている。今後、県は米軍や沖縄防衛局への騒音低減要請に、今回の調査結果を生かしていく。(石井恭子)