島の暮らし生き生き 舞踊劇「沖縄燦燦」


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「沖縄燦燦」で三良(佐辺良和、右から2人目)が女童たちに魚を与える場面=20日、沖縄市民小劇場あしびなー

 キジムナーフェスタ参加作品の舞踊劇「沖縄燦燦(さんさん)」(三隅治雄作・演出)が20日、沖縄市民小劇場あしびなーで上演された。三隅が追い求める「島に生きる人々の命の歌」を、若い舞踊家たちが躍動感あふれる踊りで表現した。

琉舞や民謡に現代的な要素を取り入れながらも、沖縄の匂いを感じさせた。
 海人の三良(さんらー)(佐辺(さなべ)良和)が、力強く海にこぎ出す場面で幕を開ける。はつらつとした漁村の女童(みやらび)たちとのやりとりや、恋人の加那(かなー)(藤戸瑛子(あきこ))と交わす愛の歌が展開されていく。共同作業による家の建築や結婚、収穫を祝う祭りなど、連綿と続く島の人々の営みが生き生きと描かれる。
 音楽は、芸能研究者の三隅が調査・録音した宮古や八重山などの民謡を基に、太陽風オーケストラの松元靖が作曲した。バイオリニストARIAの叙情的なバイオリンがチアキの歌三線と調和し、スケールの大きい世界観を演出した。
 振り付けは、自らも出演した知花小百合。琉舞の型に、ヒップホップのステップなど新たな要素を織り交ぜ、より躍動感あふれる踊りに生まれ変わらせた。遊び心も随所に見られた。家を建てる場面では家のセットを持って走りだすなど、次の展開が読めなかった。三隅は「沖縄の若者は体そのものが楽器だ。何かを感じさせれば踊りが出てくる」と語る。
 本作は8日から15日までフランスのアビニョン演劇祭に自主参加し、現地紙「ラ・プロバンス」の批評で2番目に高い四つ星評価を得た。紅型などの鮮やかな衣装やエネルギーあふれる表現が好評だったという。普遍的な魅力を持つ沖縄音楽を、より親しみやすくアレンジしたことも一因だろう。沖縄でも立ち見客が出るほど盛況だった。一つの場面が終わるごとに大きな拍手が送られ、手拍子が湧き起こるなど舞台と客席が一体となっていた。
 琉球芸能に親しんでいる人には新鮮な感動を与え、芸能になじみの薄い県外・海外の人々や県内の若い世代にも興味を持ってもらえる作品だと感じた。強力な観光商品にもなり得るのではないか。知花は「ブロードウェーのように作品が残り、たくさんの人に見てもらいたい」と話す。今回だけで終わるのはもったいない。改良を加えながら繰り返し上演してほしい。
 「沖縄燦燦」は26~28日、配役を一部変えて沖縄市民会館で上演される。問い合わせは同フェスタチケットセンター(電話)098(921)2100。(伊佐尚記)