法廷内映像制限 報道制限 根拠なし 「開かれた司法」に逆行


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<解説>
 琉球朝日放送のドキュメンタリー作品映画版での法廷内映像使用について、裁判所が「目的外」使用として不使用を求めていた。しかし、人権侵害や裁判が円滑に進まなくなる恐れなど、合理的な根拠は何も存在しない。にもかかわらず使用を制限しようとする裁判所の姿勢は「報道の自由」を侵害しかねない重大な問題をはらんでいる。

 裁判所側は何が目的外使用に当たるかは明言しなかったが「当該事件の報道」という文言について、判決や公判などを主題とする当日や翌日の新聞記事、ニュースなどを主に想定しているとの立場だ。今回の映画版について、裁判だけを対象とした報道ではないことを主な理由として「目的外」と判断したとみられる。
 だが、裁判はドキュメンタリーで描く高江住民が直面する米軍ヘリパッド建設問題と不離一体だ。問題の全体像を描いて社会に問うドキュメンタリー映画の手法で、訴訟を取り上げることは不可欠だといえる。報道の切り口によって映像使用を制限することは、報道に対する規制や誘導とみられても仕方がない。
 憲法82条1項では「裁判の対審(弁論など)及び判決は、公開法廷でこれを行ふ」と明記している。これは公開によって公正な裁判が行われることを保障し、裁判に対する国民の信頼を確保することを目的としている。合理的な理由もなく裁判の内容を広く知らせる機会を閉ざすような裁判所の姿勢は、憲法の趣旨に反してはいないか。
 国民が裁判に触れる機会は少ないのが現状だ。こうした中で、裁判の内容を伝えようとさまざまな切り口で報道することを「目的外」として制限することは、裁判所が理念に掲げる「国民に開かれた司法」にも逆行している。(沖田有吾)