平和学習どう進める 市教委と対馬丸記念会


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 那覇市教育委員会は、対馬丸記念会と共催で、市内小中学校の平和教育担当者を対象に7日、対馬丸記念館で研修会を開いた。初めて市内全小中学校54校を対象に開催した。

対馬丸遭難事件の体験者の講話や意見交換会などを通して、平和学習への見識を深めた。参加した教員からは「前から開いてほしかった。ずっと続けてほしい」などと評価する声が上がった。
 対馬丸事件の講話では生存者の平良啓子さんが経験を語った。当時小学4年生だった平良さんは疎開のため対馬丸に乗船した。沈没時は大波の中、油にまみれ必死にいかだにしがみつき、6日間漂流した体験を語った。
 元小学校教師だった平良さんは「教科書問題もあるが、子どもたちに正しい平和教育をしてほしい。戦争をさせないよう、体当たりをしてでも止める。今は組合も弱くなったが、平和のためには教員が教育の中身を整理し、洗脳されないような教育をしてほしい」と訴えた。
 城北小の徳元鈴華教諭(28)は「生きるのに必死だったことが伝わった。今の私たちでは同じことはできないだろう」と感想を述べ、「今はまだ体験者の話が聞けるが、今後はどうなるのだろうか」と不安を口にした。
 館内視察では対馬丸記念館の高良政勝理事長が展示室の遺影について、犠牲者総数に比べ5分の1と少ないことなどを解説した。高良さんは「もう現職の先生に戦争経験者はいない。現場の先生方には平和への思いを強く意識してほしい」と強調した。
 県平和祈念財団の平田守さんは「沖縄戦の特徴と教訓」と題して講話した。沖縄戦を(1)日本国内の地上戦だった(2)国土防衛・国民保護の戦いではなかった(3)戦場への民間人動員(4)沖縄戦の犠牲者は兵士より民間人が多い(5)軍隊による民間人攻撃や迫害が多発した(6)「集団自決」(強制集団死)が県内各地で起こった―などの特徴を挙げた。
 県内の平和教育は慰霊の日に近い6月に集中しがちだ。参加した仲井真中の大城邦夫教諭(42)は「とてもいい取り組みだった。平和教育の講師が見つからないなど、教師も困っていることが多い。今回の研修を子どもたちに還元したい」と語った。
 平和教育担当の教員は毎年交代する学校も多く、参加した教員からは「研修の時期を5月にしてほしい」との要望も多かった。ほかに「平和教育のビデオが古い」「戦争に対する恐怖心から、授業に参加しない子もいる」「平和教育への取り組みが弱まっている。学校長や市教委にリーダーシップを取ってほしい」「学校現場は多忙で、平和をじっくり考える時間がない。うわべだけの学習になっている」などの課題を指摘する声も上がった。

対馬丸記念館の展示について解説する高良政勝さん(左)=7日、那覇市若狭
平良 啓子さん
研修会に参加した市内小中学校の平和教育担当教員ら