小舞台、会場温かく 沖縄俳優協会、初の地方巡業


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「愛の雨傘」で周囲に祝福される美代子(左端、叶都美恋)と庄吉(同2人目、嘉陽田朝裕)=7月28日、八重瀬町中央公民館

 沖縄芝居の再興を目指して、沖縄俳優協会(春洋一会長)初の地方巡業公演が7月28日、八重瀬町中央公民館で始まった。演目は名作歌劇「愛の雨傘」(上間昌成作)と喜劇「盗人(ぬする)やまーよ」(作者不明)。

地方の公民館ならではの役者と客席の距離が近い舞台で楽しませた。那覇まで足を延ばしにくいお年寄りも多く訪れ、巡業を評価する声が聞かれた。
 「愛の雨傘」で、主人公の庄吉(嘉陽田朝裕)は看板屋の板倉(糸数きよし)に引き取られたが、今では厄介者扱いされている。自暴自棄になる庄吉を、隣のカフェーの娘美代子(叶都美恋(とみこ))がいたわり、恋仲になる。美代子の優しさが胸を打ち、板倉とカフェー店主(具志清健)の口げんかや、ひょうきんなウエートレスのチャラ子(上間朝子)が笑いを誘った。
 「盗人やまーよ」は、料金が払えず電気を消されたやまー(糸数)の家に、同じ名前の泥棒(大城常政)が侵入する。そこに家賃や借金の取り立てが次々と訪問。捕まりたくない泥棒は、暗闇の中でやまーに成り済ましてお金を払うはめになる。大城らを中心にドタバタ劇を展開した。
 地謡は恩納裕。ベテランの久高将吉、瀬名波孝子による舞踊、國吉眞博民謡研究所の民謡もあった。
 照明などの舞台装置は都市部の大規模ホールに及ばないが、観客の笑い声が絶えず温かい雰囲気だった。70代の女性は「上等だった。那覇まで見に行くのは大変なので助かる」と話した。公演を重ね、各劇団が沖縄中の芝居小屋を回っていた時代のような味わいを醸し出してほしい。
 沖縄俳優協会は25日午後2時と午後6時、南城市中央公民館で公演する。演目は「染屋の恋唄」など。問い合わせは同協会(電話)098(943)4801。