魅せた 新感覚時代劇 劇団O.Z.E公演


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笑いや人間ドラマ、エンターテインメント性の高い演出で引き付けた「御法度忍術」=3日、沖縄市民小劇場あしびなー

 劇団O.Z.Eの第44回本公演「御法度忍術」(はっとー作、真栄平仁演出)が3、4の両日、沖縄市民小劇場あしびなーであった。お笑い出身の脚本家はっとーが初めて時代劇に挑戦。

得意とする笑いだけでなく、友情や裏切りを盛り込んだ人間ドラマを書き下ろした。息詰まる殺陣や現代的な音楽、特殊効果を用いたエンターテインメント性の高い演出で、新感覚の時代劇に仕上げた。
 忍集団「奪破(だっぱ)」の玄心(新垣晋也)、時雨(平安信行)、陸丸(松原進之介)、お霧(幸地尚子)は、内職や表向きの仕事をしながら暮らしている。「幕府が専属忍者を募集する」との情報が入り、意気込む玄心。だが、それは奪破の宿敵である沙智姫(秋山ひとみ)が、忍たちをつぶし合わせるために流したうそだった。
 お調子者の玄心や真面目だが抜けている時雨など、個性が強調された登場人物が時代劇らしい。主役も脇役も存在感があった。一方で「忍者一本で食っていく」ことを夢見る玄心は、芸術家や役者を志す現代の若者と重なる。忍集団が会社のように解散、合併する様子や、素人が軽い気持ちで忍者を始める「にわか忍」がはやる世情も、妙に現実味があって面白い。
 物語は、笑いを織り交ぜながらテンポよく進む。奪破と沙智姫の決闘では、陸丸が沙智姫のスパイであることが明らかになる。陸丸の狙いは、強大な破壊力を持つ奪破の「御法度忍術」を盗むことだった。だが、今度は沙智姫側の梢(こずえ)(又吉裕子)が玄心たちに助太刀する。だまし合いの連続が観客を引き付けた。自刃する陸丸が、途中さりげなく登場する木の実のおかげで命を救われるなど、伏線も効いていた。
 O.Z.E団員と特別出演の「美ら結シンカムムヌチハンター」は、スピード感ある殺陣を繰り広げた。現代的なリズムに津軽三味線を乗せた吉田兄弟の楽曲が高揚感を増した。御法度忍術は照明や稲妻、スモークなどで表現。「鬼の影が浮かび上がる」というト書きが見事に表現されたのは、脚本を書いたはっとーも驚いたという。
 O.Z.Eの演劇は、頭である真栄平の作品が中心だ。はっとーが書いた長編演劇を真栄平が演出するのは9年ぶりというが、二人が組んだ演劇をまた見てみたいと感じた。
(伊佐尚記)