江藤、故郷凱旋で笑顔 WBAフライ級暫定王者


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 1日にタイ・バンコクであった世界ボクシング協会(WBA)フライ級暫定タイトルマッチを制し、県出身では平仲明信氏以来21年ぶりの世界王者となった本部町出身の江藤光喜(25)=白井・具志堅スポーツ。

歓喜から2週間がたち、「実感が湧いてきたと同時に責任感も自信も出てきた」と充実の表情で語った。
 対戦相手は地元選手。試合前のウオーミングアップを中断されるなど敵地の洗礼を受けながら、江藤は打ち合いに真っ向から臨み、3―0で判定勝ちした。連打でダウンを奪った最終回は「諦めるな」「ぶっ倒せ」と頭の中で繰り返していたという。過去、タイでの日本男子選手の世界戦成績は1分け17敗。気力で初勝利の栄誉をつかんだ。
 2年前にタイで挑んだ初タイトルマッチに敗れ、その後は腰を痛めて1年近くブランクもあった。苦労を乗り越え、手にした王座。現在、WBAフライ級には、正規王者のフアンカルロス・レベコ(アルゼンチン)がいる。江藤は今年中に撃破して“暫定”を取り払いたいと語り「どちらが勝っても盛り上がるような、気持ちのあるボクシングをしたい」と意気込む。
 同じボクサーの道を歩む双子の弟・大喜と1歳下の弟・伸悟とは、東京の一軒家に3人で暮らしている。3兄弟といえば有名な「亀田」とは、上の2人の名前もよく似ている。比較されることも多く、「そろって世界チャンプになれたら、そんなかっこいいことはない」と江藤も3兄弟での活躍を夢見る。
 13日に沖縄に凱旋(がいせん)し、空港では親戚が横断幕を広げて出迎えた。同行した所属ジムの具志堅用高会長は「僕がかつて持っていた(WBAの)ベルトを弟子も手にし、うれしい」と感慨深げで「どんどん強くなって沖縄の若い子に夢を与えてほしい」と期待を込めた。母智子さん(50)からは涙の抱擁を受けた江藤。まもなく旧盆でもあり、8年前に亡くなった祖母の芳江さんに「いい報告ができますね」と、チャンピオンの表情が和らいだ。

タイでの試合を振り返る江藤光喜=13日、那覇空港(桑原晶子撮影)
母智子さんの手にチャンピオンベルトを渡す江藤光喜=13日、那覇空港(桑原晶子撮影)