ゆいレール延長で活性化に期待の声 専門家らがシンポ


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浦添市へのゆいレール延長に向けて、課題や展望について意見を交わした記念シンポジウム=16日、那覇市の県市町村自治会館

 10日にゆいレール開業10周年を迎えた沖縄都市モノレール(那覇市、仲吉良次社長)は16日、記念シンポジウムを那覇市の県市町村自治会館で開いた。ゆいレールは県民の足として定着し、2012年度乗客数は1422万9789人の過去最高を更新した。11月には19年春の開通を目指し浦添市への延長工事が始まる。

シンポジウムでは、ゆいレールを中心とした新しいまちづくりや交通体系の整備、観光振興への貢献など、唯一の軌道系公共交通機関として、さまざまな期待が示された。仲吉社長のほか専門家や地域代表ら5氏がゆいレールの現状や課題、展望について意見を交わした。

◆中北部客増に期待/仲吉氏
 仲吉社長は、今後の利用状況の期待について説明した。定期券の利用率が16%と低い一方で、回数券の利用者が多いことを強調した。「全国でよく使われている定期券と同様の割合で沖縄では回数券が使われている。利用客全体の中で30~35%が通勤・通学で利用しており、特にサラリーマンの回数券の利用者が多い」と話した。
 2012年度の年間利用客数は、過去最高の6・3%の伸び率となった。延長により1日当たりの利用客数はさらに1万人が加算され5万人になる見込み。「中北部の増加が期待できる」と話した。
 また、ここ10年間で「駅前」という考え方ができ、県民の生活スタイルが変化してきたことを指摘した。自家用車を使わないエコを前提にした生活スタイルについて触れ「今後は駅を中心とした生活によって、うちなーんちゅの文化や価値観の変化が生まれるのではないか」と話した。

◆5千億超の経済効果/久高氏
 りゅうぎん総合研究所の久高豊常務は、討論会前の基調講演でゆいレール駅周辺の建築物による経済効果は10年間で5473億円に上ると報告した。
 討論会では駅周辺について「ホテルで宿泊費などの売上高があるほか、小売りや卸売り事業なども新たに発生している。アパートは家賃収入などがあり、商業活動まで数値化すると、さらに大きな経済効果が算出できるだろう」と、波及効果を評価した。
 浦添市への延長については、乗用車やオートバイを駅近くの駐車場に置き、モノレールに乗り換えて通勤などに向かう「パークアンドライド」事業に期待する。中北部からの利用が進むことで「国道58号の渋滞の軽減につながり、国道の利用も快適になると思う」と見通した。

◆公共交通の再構築を/杉本氏
 県外で鉄道交通のマーケティング戦略などを手掛け、沖縄本島IC乗車券システム検討委員会の事務局を担当する杉本将隆デロイトトーマツコンサルティングマネジャーは、県外に比べ沖縄は公共交通機関の利用率が低いことが課題とした。ゆいレールとバスの結節など「公共交通の再構築が必要」と指摘した。
 その上で、浦添市の沖縄自動車道近くまで延ばすゆいレール延長事業は、課題解決への「転換点になる」と効果を期待する。「延長はチャンス。人が集まる目的あるまちづくりを進め、高速バスとの結節を強化するなど、利用率を上げる戦略が重要になる」と提起した。

◆「時は金なり」実感/福治氏
 那覇市自治会長会連合会の福治貞子会長は1日に5~6回利用するなど、ゆいレール運行10年間を通して利便性を実感している。「ゆいレールは料金が安く、定時定速で時間を有効的に使える。時は金なり、という思いを強くしている」と強調した。
 さらにゆいレールを使って首里城を訪れる観光客が増えているほか、地域の歴史文化を学ぶ「まちまーい」も実施されているとして「地域が活性化している」と評価した上で、「今後も地域を巻き込んだ取り組みにつなげてほしい」と話し、さらなるゆいレールの利便性向上と効果を期待した。

◆アーケード街を/石川氏
 浦添市都市モノレール沿線地区景観まちづくり協議会委員で、浦添市前田自治会の石川仁孝会長は「浦添西原線が慢性的な渋滞を起こしている。車がたくさん入ってくることで子どもの通学時は心配が多い」と懸念を示した上で、前田地区への延長によって交通量が緩和する期待感を示した。
 また、浦添市に人が集まる「新しい生活の場」としての可能性も訴えた。
 終着駅は浦西駅で計画されており、駅周辺を区画整理する必要性を指摘。「アーケードをつくって駅から抜けるメーン通りとして、ちょっとした買い物ができる楽しい場所がつくられたらいい」と話し、那覇方面からゆいレール利用者が浦添市へ足を運ぶような計画を提案。また、首里城と連携して浦添城跡を紹介する取り組みについても「首里城と浦添城跡の歴史の観点から宣伝する必要がある」と話した。