「普天間」周辺で捕獲したマングースから高濃度PCB


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 宜野湾市の米軍普天間飛行場などの米軍基地周辺で捕獲したマングースの体内に、有害なポリ塩化ビフェニール(PCB)の一種が高濃度で蓄積していることを愛媛大と名桜大の研究グループが19日までに突き止めた。

県内他地域のマングースと比べ最大8・9倍に上る。分析した専門家は「汚染源は不明だが、基地周辺に特異なPCB汚染源が存在すると考えられる。他の生物や周辺住民に汚染が及んでいる可能性がある」と指摘。米軍基地を含めた詳細なモニタリング(監視)調査の必要性を訴えた。
 調査したのは、愛媛大沿岸環境科学研究センターの田辺信介教授と名桜大の田代豊教授の研究グループ。2008年8~9月、交通事故で死ぬなどしたマングースを、普天間飛行場周辺で6匹、浦添市の牧港補給地区で1匹を捕獲した。
 7匹全ての体内からPCBやダイオキシンを検出した。このうちモノオルトという種類のPCBは、肝臓組織の脂肪1グラム当たり最高890ナノグラム(ナノは10億分の1)、平均310ナノグラムと特に高濃度だった。自然界で通常認められる体内蓄積濃度は100ナノグラム未満だという。
 県内他地域のマングースと大きな差があるほか、本土のネコやイノシシ、アライグマより10~100倍高かった。
 ダイオキシンなど他の物質の濃度は他地域の陸生哺乳類とほぼ同レベルであることなどから、研究グループは生息地近くでPCBに汚染されたとみている。今回の捕獲数では、マングースの生態にどのような影響が出るかは分からないという。
 モノオルトは、PCB製剤であるアロクロール1254、1260、カネクロール500、600などに多く含有される。このため研究グループは「基地周辺でそれらを含有するトランスやコンデンサーなどからPCBが漏出している可能性がある」としている。
 研究グループは7月末、東京都で開催された環境化学討論会で報告した。地元住民に配慮し、マングースの具体的な捕獲場所を明らかにしていない。
 牧港補給地区はPCBを含んだ電機機器などを保管している。元基地従業員の証言によると、米軍は県内で1960年代以降、浄化などの適切な措置を取らないまま、PCBを水路などに投棄した事例がある。

<用語>ポリ塩化ビフェニール(PCB)
 分子中に塩素を含む有機塩素化合物の一種。熱に強いなどの利点から、変圧器やコンデンサーの絶縁油、可塑剤や塗料などに広く使われた。毒性が強く、環境中で分解されにくいことが問題となり、1970年代には日本を含めほとんどの国で生産や使用が禁止された。使用禁止後も変圧器などに含まれるPCBが未処理のまま残されており、保管中に行方不明になったり、環境中に漏れ出したりすることが問題になっている。
英文へ→High level PCBs found in mongooses near Futenma Air Station