声の力「祝祭」彩る オペラ愛島


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
声を合わせる(左から)知念、喜納、山本、押川、金城、シュレイマ、兼嶋、牧野、松田、増原。10人の歌声が「祝祭」を彩った=16日、那覇市のパレット市民劇場

 極彩色の断章。次々と繰り出される声の芸術が、GALA(祝祭)を彩る。演じられるのは名作オペラの象徴的な場面の数々。声は登場する人間たちの愛憎を力強いタッチで描く。

舞台となった土地に吹きすぎる風や温度をも緻密に描く。「蝶々夫人」の長崎。「椿姫」のプロヴァンス。時間と空間を自在に操る声の力によって、舞台上に描かれる「祝祭」の彩りは際立つ。
 オペラ愛島(アイランド)の「ガラ・コンサート2013」。16日、那覇市のパレット市民劇場。沖縄で生まれ育ち、海外を拠点とする声楽家をはじめ、国内外から駆けつけたゲストまで、多様な声の持ち主が舞台へ上がる。
 ヴェルディ「リゴレット」。マントヴァ公爵(マーティン・シュレイマ=テノール)に思いを寄せるジルダ(金城由起子=ソプラノ)。ジルダを気遣う父リゴレット(増原英也=バリトン)。そして公爵を誘惑するマッダレーナ(兼嶋麗子=メゾソプラノ)。
 ジルダは戸惑い、嘆く。リゴレットの怒りは、公爵への殺意に変わっていく。プラハのホールを満たす金城の“逆輸入”の歌声をはじめ、迫力ある声の重なりで、交錯する4人の思惑が映し出される。
 プッチーニ「蝶々夫人」は松田奈緒美(ソプラノ)が歌う。アリア「ある晴れた日に」は、中低音域に重点が置かれた難曲。訪れることのない恋人を待ち続ける真っすぐな思い。清らかな響きを支える力強い歌声は、物語が決して幸福な結末を迎えないことを暗示していた。
 ヴェルディ「椿姫」。牧野正人(バリトン)が「プロヴァンスの海と陸」で子を思う父の心を映す。青年の求愛に心を乱される高級娼婦ヴィオレッタの心情を「ああ、そは彼の人か」で山本令子(ソプラノ)が描く。
 ほか知念利津子(ソプラノ)、喜納健仁(テノール)、押川浩士(バリトン)が出演。ピアノは冨里由華子、相川未紀、武田光史、庭野佐知子が務めた。最終盤には出演者が舞台にそろい、声を響き合わせて喝采を浴びた。牧野の親しみやすい語りが、聞く者を物語の世界に誘った。
(宮城隆尋)