糸満・杉浦副市長再任 与党「糸志会」が分裂


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杉浦友平氏を副市長に再任する人事案の採決を見守る多数の傍聴人=19日、糸満市議会

賛否割れ“板挟み”も

 【糸満】糸満市議会(上原勲議長)は19日、臨時議会を開き、空席となっていた副市長職に3月まで4年間、同職を務めていた杉浦友平氏(60)を充てる議案を賛成多数(賛成10、反対9、退席3)で可決した。同人事案は3月定例会で一度否決されていたが上原裕常市長が再度提案した。

上原市長の希望通り議案は通ったが、与党市議内でも賛否が割れる事態となり、市長の政策を支える市議グループ「糸志(いっし)会」に所属する市議10人のうち、4人の脱退が決まった。今後の市政運営や11月の市議選に影響を及ぼすことは必至だ。

残るしこり
 3月定例会では多くの与党市議が反対に回り、同議案は賛成少数(賛成7、反対15)で否決されていた。この結果をめぐり、不満を持った数人の与党市議が新たな会派を立ち上げた。
 今回の採決の結果を受けて、上原市長は「私との信頼関係や行政手腕で杉浦氏が必要と訴えてきた。提案が通ってうれしく思っている。(採決の結果で)しこりを心配される人もいるが、今後の糸満市発展のために行政と議会が一丸となってやっていきたい」と意気込んだ。
 杉浦氏の再任に反対する地元糸満市区選出の新垣哲司県議も3月定例会の時と同様に議場を訪れ、支持者とともに採決の行方を見守った。新垣県議は議案の結果を見届けた後、大勢の支持者とともに議場を後にした。
 3月定例会で反対に回った与党市議のうち、19日の採決では2人が賛成に立った。態度を変えた市議の一人は「市長と考え方に行き違いがあったが、お互い話し合って決めた。あくまでも人事の話なので、今後の市政運営には影響はない」との見通しを示した。
 一方、ある市議は、杉浦氏を推す上原市長と同氏に反対する新垣県議との間で「板挟みだった」と漏らす。「こういうのには耐えきれない」と疲れた表情で話した。

市民不在
 杉浦氏の人事案をめぐり、議場で賛成の意見を述べた市議は同氏の実績や調整能力を強調。反対の立場で意見を述べた市議は杉浦氏が糸満市に居住していないことや、同氏が理事長を務めた糸満市土地開発公社の広告費代物弁済問題などをやり玉に挙げた。
 普段は空席が多い議場だが19日の臨時会では、約150人の傍聴人が訪れた。議場に入りきれないため、ロビーに設置されたテレビの前に人だかりができた。
 3月から議会を見てきたという男性は「気にくわなかったから、次はどうするとか、市民のいないところで争うのはもうやめてほしい。市民がどういった人材を求めているか議会はきちんと考えてほしい」と話し、“市民不在”の政治を嘆いた。(梅田正覚)