浦添市の政策アドバイザー招聘 市民に方針見えず


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取材に答える松本哲治浦添市長(左)と政策アドバイザーの樋口耕太郎氏=12日、浦添市役所

市長、政策決定変革も

 【浦添】浦添市は非常勤の政策アドバイザーとして、沖縄大准教授の樋口耕太郎氏(48)を招聘(しょうへい)する。松本哲治市長は、米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)の跡利用や同地区沖合を埋め立てる市西海岸開発事業に、樋口氏の助言を得ながら「論議」していく意向だ。しかし、具体的な形や政策決定に至る行程についてはまだ明言しておらず、市職員や市議からは「市長の考えが分からない」との声も上がる。市内外から注目される事業なだけに、樋口氏の助言をどう具現化していくか、早急な方針説明が求められている。

 過去に投資会社で観光宿泊施設の買収などに当たり、国内リゾートを調査研究した樋口氏は「リゾート産業は日本のどこも、ぼろぼろの状態」とし、沖縄も「出てくる数字は前向きだが危機的な状態だ」と指摘する。
 「衰退の原因は質の低下にある。それにより払う単価が少ない観光客に訴求することになる」と解説。「消費額の多い客よりその人数は多いことから、質が低下すると数字がプラスになり、景気は一時的に良くなるが、低質を追い掛け数字も悪化する」という。この悪い流れが約30年前から続いているとの分析だ。
 その上で樋口氏は、早ければ2025年度にも返還完了するキンザーの跡利用と市西海岸の開発事業について「市が描くビジョンが今後、沖縄の50年を決定する」と断言する。「約270ヘクタールでリゾートになくてはならない立地。那覇空港から15分は東アジアから2時間だ。沖縄全体に波及効果があり、流れを転換する好機だ」と位置付ける。
 キンザーを含めた市西海岸開発に意欲的な樋口氏。具体的な私案もあるが、松本市長は「樋口氏の案を持ち、説得して歩くということではない」という。「樋口氏の考えも職員や議会、市民らと共有しながら、さまざまな案を議論したい」とし、「みんなで議論してみんなが納得できれば、それが一番だとなる」と、既存の政策決定プロセスを変革したい考えだ。
 ただ「議論」ばかりが続き、いつまでも「結論」に至らないのではとの懸念もある。特に西海岸開発は今も進行中で、論議の結果次第では凍結の可能性もある。そうなれば市政運営に多大な影響が出ることも予想される。早急に行程表を示し、議会や職員との意思疎通を促進することが喫緊の課題だ。
(普久原裕南)