琉球に根付く舞、開花 N・Sバレエ団


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琉球の音楽とバレエを融合させる「琉球クリエイティブ」。担い手たちの果敢な試みが、エンターテインメントとして形をなす=22日、那覇市てんぶすホール

 琉球の息吹。欧州で生み出されたバレエに、沖縄の担い手たちが根を這(は)わせる。誰も見たことのない花を次々と咲かせていく。20年前に発想し、追い求めてきた長崎佐世、その振り付けと演出の妙。長崎真湖や昂師吏功ら、踊り手たちの洗練された舞が新たなバレエを具体化する。

バレエの舞台でクレオール化を形にするような文化復権の試み。さまざまな地域の文化を取り入れて独自性を高めてきた琉球、沖縄がその“らしさ”を発揮しながら、新たなバレエを“発明”する試みにも映る。
 N・Sバレエ団(長崎佐世代表)による公演「琉球クリエイティブ」(振り付け指導・長崎佐世)。22日、那覇市てんぶすホール。主催は那覇市ぶんかテンブス館。
 「鷲ん鳥」。幕開けに集まる視線の先、鮮烈に焼き付くのは力強い羽ばたき。凛とした翼を表現する、しなやかな腕の動き。はつらつと明るい「固み節」、猫の所作を体現するように足音を立てず軽やかに舞う「与那国の猫小」とたたみかける。ひときわにぎやかな「海のチンボーラー」はコミカルな踊りで会場をわかせる。
 「舞術」は昂師の力強い跳躍とヌンチャク、そして長崎真湖のしなやかな棒術。会場は息をのむ。勇壮で厳かな演舞は、琉球王国に吹いたであろう風を感じさせる。指導は棒術とヌンチャクが琉球古武術外間古武道宗家の外間哲弘、空手が中学教師の又吉弦貴。
 三板を手に安里友香らが舞う「屋嘉の浜節」、指導はオフィス琉星代表の城間祥之。竹かごを手に、働くことの素晴らしさを玉城七星らが表現した「谷茶前」。
 出演者が舞台にそろうコーダは「豊年音頭」を背後に跳躍、連続回転など華やか。木曜芸能公演「百花繚乱」として回を重ね、新たな要素を加えて進化し続ける「琉球クリエイティブ」。担い手たちが舞台で形にして見せたのは、沖縄に根差したバレエを花開かせる、可能性の舞だ。(宮城隆尋)