「洋楽＝２」カニエ・ウェスト『イーザス』

現代のブラック・ヒーローを意味するアルバム・タイトル
　ラッパー＆プロデューサー、カニエの６枚目のスタジオアルバムです。英米で１位を獲得しました。ハリケーン・カトリーナがニューオーリーンズを襲った２００５年には「ブッシュ大統領は黒人の事を何も考えていない」と発言するなど、終わらないレイシズムを痛烈に批判し続けるカニエに今日のブラック・パワーを感じます。

　最近アメリカで麻薬の取り締まりを口実にゲットーの黒人達を逮捕し民営刑務所に送り込んでいるというドキュメンタリーをＮＨＫで見ましたが、カニエもその問題をアルバムのリード・トラック『ニュー・スレイヴス』で取り上げています。歌詞に出てくる“ブラッド・オン・ザ・リーヴス”は黒人のリンチを歌ったビリー・ホリデイの『奇妙な果実』からの引用ですが、さらに同タイトルの新曲もニーナ・シモンのサンプリングで収録しています。
　アルバム・タイトルは彼のニックネームにジーザスを加えた造語。新時代のブラック・ヒーローを意味しています。
　（ユニバーサル・２３００円）＝北澤孝
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北澤孝のプロフィル
　きたざわ・たかし　１９４７年、東京生まれ。小学生のころからダイナ・ショアなど洋楽を好み、大学時代はニューオリンズ・ジャズ・クラブに所属し、トラッド・ジャズを研究。その後レコード会社、音楽出版会社に勤務。携わったアーティストは、ポール・モーリアからボン・ジョヴィ、ブリトニー・スピアーズ、ＭＯＮＫＥＹ　ＭＡＪＩＫ、Ｓｕｐｅｒｆｌｙまで多岐にわたる。
(共同通信)