地域医療 献身36年 伊是名医師 71歳、引退を決意


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「感謝のつどい」で地域の人々の出迎えを受ける伊是名雄三さん(中央)=24日、石垣市石垣の石垣公民館

 【石垣】36年間、石垣市で地域医療を支えた伊是名医院の伊是名雄三さん(71)が7月末で引退した。同医院があった字石垣の石垣字会と老人クラブ尚寿会は24日、伊是名さんをねぎらう「感謝のつどい」を石垣公民館で開催した。約200人が詰め掛けた会場では閉院を惜しむ声が多く聞かれ、伊是名さんは「申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と話した。

 伊是名さんは旧平良市出身。宮古高校を卒業後、山口大学医学部に進学し、医師免許を取得した。1970年12月、八重山病院外科医長に就任し、その後は副院長、院長を務めた。
 当時、「野戦病院」とやゆされるほど老朽化していた八重山病院の改築が遅々として進まなかったため、辞表を提出して行政にハッパを掛けるなど、身をていして地域医療に貢献した。
 八重山病院退職後、77年に伊是名医院を開院。専門の外科以外の患者も受け入れ、地域に親しまれてきた。
 しかし、昨年から左手の指の腱鞘(けんしょう)炎が悪化し、診療が困難になった。「わざわざ足を運んでくれた患者に診られないとは言えない。自分の信念とは違う金もうけだけの医療になってしまう」と、引退を決意した。
 感謝のつどいは歌や踊りで伊是名さんをもてなし、関係者が次々とスピーチで感謝の言葉を述べた。「字石垣は先生のおかげで医療に恵まれた地域だった」「地域全体に安心を与えてくれた」と礼を言われるたび、伊是名さんは頭を深くたれて感謝の意を示した。
 伊是名さんは「多くの人に来てもらっているが、うれしいなんて気持ちは起こらない。治療を続けられず、ただただ申し訳ない気持ちだ」と話した。