波の上仮桟橋 鉄柱、海底に残す 引き抜かず切断、ふた


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 国による道路工事の後処理が不十分だったために那覇市の波の上ビーチ周辺海浜の浅瀬に、深さ最大6・5メートルの穴が56カ所開いていた問題で、穴とは別の場所で鉄の支柱(鋼管)を切断して残し、コンクリートでふたをしたことが3日、分かった。

鉄の支柱は、工事のために設置した仮桟橋と作業台を支えていたもので、通常は撤去作業の際に引き抜かれるが、少なくとも7カ所で海底の地中に埋められた。専門家は「建設資材を海に捨てたことと同じで許されない。環境への意識が低い」と指摘している。
 鉄の支柱が残ったのは、うみそらトンネルにつながる那覇西道路建設工事が原因。工事を発注した南部国道事務所は、那覇市若狭の陸地近くの海底は「硬くて抜けなかった」と説明している。
 鉄の支柱は複数カ所に及び、深いもので40メートルの支柱が3カ所で地中に埋まったままになっている。そのほか、約20メートルの深さに埋められた支柱が複数カ所ある。支柱は海底から深さ4センチ~1メートル15センチの周囲を掘った上で切り取られ、コンクリートのふたがかぶせられた。
 工事全体では約1350本の支柱が使われており、支柱の撤去作業は通常、引き抜いて穴を埋めるが、当初予定していない切断工事が行われた。切断工事は2012年2月~13年3月の間に行われた。関係者によると、引き抜くには大きな重機が必要で経費がかかるため、切断した方が安く済むとの判断が働いたとの見方もある。
(関戸塩)

初めて聞く 許されない
 山口晴幸防衛大学校教授(環境地盤工学)の話 初めて聞いた事例だ。鉄の支柱を抜く予定があったのなら、そもそも海に不要であり、今回の措置は建設資材を海に捨てたことと同じ意味になる。公共工事だから許されることではない。民間の工事でこのような事態になったなら、きっと国は撤去を命じるだろう。率先して環境保全に取り組むべき国の役割を考えると、環境に対する意識が低いと言わざるを得ない。一般的に橋脚付近では潮の流れが速く、海底変動が起こりやすい。今回はコンクリートでふたをしたが、埋めた鉄の支柱が今後海中に出てくる可能性もある。環境面だけでなく安全面からも定期的な調査が必要だ。