適材適所で好演 沖縄俳優協会「染屋の恋唄」


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染料でマカテー(中央)の頬を汚してしまう蒲太(右)。マカテーは再会を喜ぶ=8月25日、南城市中央公民館

 沖縄俳優協会(春洋一会長)の地方公演が8月25日、南城市中央公民館で行われ、歌劇「染屋の恋唄」(高江洲紅矢作、久高将吉演出)などが上演された。

「染屋―」は、はんなりとした雰囲気を持つ小嶺和佳子が、色香と気品を兼ね備えたジュリ、マカテーを好演した。ほかの役も適材適所で、純愛物語を生き生きと描いた。
 染め物職人の蒲太(嘉陽田朝裕)は、士族専門ジュリのマカテーに一目ぼれする。3年間思いを募らせた蒲太は、士族を装ってマカテーを訪ねる。蒲太が染料で青くなった手を隠し、不自然な動きでお茶を飲もうとする様子が笑いを誘った。二枚目の嘉陽田はコミカルな演技もこなし、蒲太をみずみずしく演じた。
 地謡は宮城武碩。遊郭で一夜が明け、蒲太の身分がマカテーにばれる場面は見応えがあった。役者の歌とせりふに加え、地謡もヤマトグチで状況や心情を歌うのが面白い。蒲太に心を打たれたマカテーが、後日染屋を訪ねる最終幕も名場面だ。よろめいた蒲太がマカテーに抱きつき、白い頬に黒い手の跡がくっきりと付く。劣等感の象徴だった染料は、二人の仲むつまじさの象徴に変わる。
 ベテランの春が蒲太を温かく見守る染屋の主人を演じ、舞台に安定感が生まれた。先輩職人役の具志清健と高宮城実人は、マカテーを見て固まる演技で観客を爆笑させた。すっとんきょうな豆腐売りを演じた山川宗春も、登場時間は短かかったが印象に残った。