「命どぅ宝」伝えたい 奈良の小川さん、沖縄戦の絵本


社会
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沖縄戦を基に絵本「サシチはガジュマルの木の上で」を出版した小川惠玉(俊子)さん=東京都内

 【奈良】沖縄戦の最中、戦禍を逃れて伊江島の木の上で2年近くを過ごした故佐次田秀順さんを題材にした絵本「サシチはガジュマルの木の上で」(遊絲社)を、奈良県大和郡山市の小川惠玉(けいぎょく)(本名・俊子)さん(70)がこのほど、出版した。

「沖縄の言葉『命(ぬち)どぅ宝』の心を子どもたちに教えたい」と話す小川さん。小学校での読み聞かせにも使われ、沖縄戦の一端を伝えている。
 小川さんは元小学校教師。きっかけはうるま市(旧石川市)出身の佐次田さんの話を載せた新聞のコラムだった。「どうやって木の上で生き延びたのか」と調べ、雑誌のルポなどから構想を練った。イラストは息子の暁央(あきおう)(本名・暁雄(あきお))さんが担当した。
 絵本の主人公サシチは森で宝探しに明け暮れる若者。敵の攻撃に逃げ惑って木に登り、米兵が寝ている間に下りて食物を探した。村人がサシチの生存を知り、喜び合って踊る中、サシチは「ああ、おら宝もんなら見つけたねえ」。命こそ宝だと気付く。
 佐次田さんの話は作家の井上ひさしさん原案の「木の上の軍隊」として、ことし初上演された。小川さんは「井上ひさしさんと同じ思いで沖縄のことを考えていたことがうれしい」と話す。
 沖縄は危険なオスプレイが飛び交い、基地の過重負担も軽減されない。小川さんは「沖縄をいまだ占領地のように使っている」と憤る。「他国との対立をあおり、福島など自国の問題を覆い隠そうとする政府に危機感を覚える。この本で子どもたちに命こそ、平和こそ大切だと知ってもらいたい」と話した。
(島洋子)