山之口貘の自筆原稿、書簡など5点 生誕イベントで展示


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 沖縄出身の詩人・山之口貘が、1952年1月1日の琉球新報(新年号)に掲載した詩「船」の自筆原稿と、当時の又吉康和琉球新報社長に宛てた書簡(51年12月16日付)などを、学芸員の鶴田大(おおき)さん(47)=南城市=がこのほど入手した。

7日に琉球新報ホールで開かれる貘の生誕110年記念イベント「貘さん、ありがとう」の会場で展示する。資料は自筆原稿、書簡、貘の写真、封筒、掲載前の試し刷り紙面の5点。鶴田さんが収集家の翁長良明さん=那覇市=から譲り受けた。
 「船」は〈文明諸君/地球ののつかる/船をひとつ/なんとか発明できないことはないだらう〉と始まる詩。詩集『鮪(まぐろ)に鰯(いわし)』に掲載されている。手紙は〈御紙を通じて郷里の皆様へ呉々(くれぐれ)もよろしく〉などとつづっている。
 鶴田さんは「初出は東京の雑誌だが、長年帰省していなかった沖縄に宛てた詩と手紙は意義深い資料だ」と語る。県立図書館に所蔵されている約80枚の草稿と比べ「かなり差異が大きい。決定稿との間にさらに数十枚の未定稿があったことが、うかがわれる。徹底して推敲(すいこう)を重ねた貘の特徴が表れている」と話した。

山之口貘の詩「船」の自筆原稿
鶴田大さん