語り継ぐ「戦時性暴力」 アリラン碑建立5周年


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日本軍『慰安婦』の祈念碑に献花する関係者=7日、宮古島市上野野原

 【宮古島】太平洋戦争中に朝鮮人慰安婦が宮古島に連行された歴史などを伝える「日本軍『慰安婦』の祈念碑」と「アリランの碑」の建立5周年を記念した集会が7日、宮古島市上野野原の記念碑前で開かれた。

侵略の定義をめぐる安倍晋三首相発言や橋下徹大阪市長の従軍慰安婦発言などで歴史認識に対する懸念の声が国内外にある中、建立5周年の節目を機に、戦時中の女性に対する性暴力の悲惨さと平和を受け継ぐ決意を新たにした。集会には地元住民や研究者ら40人が参加した。
 碑は2008年9月7日に建立した。「女たちへ」と書かれた祈念碑の両隣には「全世界の戦時暴力の被害者を悼み、二度と戦争のない平和な世界を祈る」との言葉がある。日本語や韓国語など日本軍の被害を受けた地域と、ベトナム戦争で米軍の雇い兵になった韓国軍から被害を受けたベトナム語の12言語でつづられている。
 宮古島にいた朝鮮人慰安婦についての証言者で、記念碑の土地を提供した与那覇博敏さん(80)は安倍首相や橋下氏の発言に「悲惨な戦争を語り継ぐ者として、慰安婦が存在したことを知る者として憤りを感じる」と語った。「必ず国民が認識を改める日が来る。戦争を二度と繰り返さないよう5周年を契機に慰安婦をめぐる事実を伝えていきたい」と力を込めた。
 宮古島に日本軍「慰安婦」の記念碑を建てる会の尹貞玉(ユンジョンオク)共同代表は「若いころ傷つけられた女性たちがここに眠り、私たちと一緒に平和な地球を願っている。ここを、戦争や開発による破壊から地球を守るシンボルにしたい」とあいさつした。
 宮古島で最初に聞き取り調査を行った早稲田大国際言語文化研究所の洪〓伸(ホンユンシン)研究員は「多くの証言者が記念碑維持に努力している。亡くなった証言者のことを思い出しながら、次へつないでいきたい」と思いを語った。
 記念碑への献花や朝鮮民謡の「アリラン」を共に歌い、恒久平和を誓った。

※注:〓は王ヘンに「允」