北大東の貯水率9.8% 農家、かん水施設整備要望


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サトウキビ農地を視察する県議会経済労働委員会の委員ら=9日、北大東村

 県議会経済労働委員会(上原章委員長)は9日、5月下旬から続く少雨傾向でサトウキビの干ばつ被害が深刻な南北大東両村を視察した。8月に北大東村で86ミリ、南大東村で113ミリの雨が降り、サトウキビの生育状況は若干改善しているものの、村内貯水池の貯水率は現在も10%前後と依然厳しい状況にある。

委員らは北大東村の農場や整備中の貯水施設、製糖工場などを視察。南大東村では関係者らから被害状況を聴取した。視察最終日の10日は南大東村の農場などを調査する。(長嶺真輝)

<北大東>
 県議会経済労働委員会の委員らは午前、北大東村役場の担当者や生産農家らと意見交換会を実施。村役場の報告によると、村の6月降雨量は平年比7・6%の13・0ミリ、7月は同47・2%の20・0ミリと低水準が続いたが、8月16、17の両日に1日20ミリ以上の雨が降り、干ばつ状況は幾分和らいだ。しかし、9月6日現在の村内貯水池の貯水率は9・8%と依然低水準となっている。
 同村さとうきび生産組合の與儀實善組合長は「とにかく雨が降るのを願うしかない。キビは節水しながら水をまいて枯れないように維持しているので、雨が降れば復活する」と話した。
 一方、村内にはかん水施設が整備されている地区と未整備の地区があり、生育状況に大きな差が生じている。2メートル以上に青々と成長したサトウキビもあれば、まだ1メートルほどのサトウキビもあった。意見交換会では生産農家や委員らから、同席した県の担当者らに対し整備の前倒しを求める声も上がった。
 県農林水産部の増村光広農漁村基盤統括監は「県も水の確保は重要だと認識している。(生産基盤の)大前提として整備している」と回答。さらに「今後は地中に点滴チューブを埋め込み、さらに効率的に水をまけるようにしたい。2014年度の調査事業を予算要求している」と生産体制の強化に前向きな姿勢を示した。
 以前から干ばつが頻発する同村内には現在、村営と県営を合わせ19の貯水池がある。村の計画と照らし合わせた整備率は62・0%。現在さらに4カ所の貯水池を建設しており、15年度までに100%の整備を予定している。
 午後には北大東製糖を視察。8月には水の運搬をしていた同製糖工場の職員らは、現在は農家の夏植え作業を手伝っているという。同工場の新里副則常務は「干ばつもあり、職員総出で農家を支援している。製糖工場も協力しないと増産は厳しい」と話した。
 甚大な台風被害を受けた同村の12~13年産のサトウキビ生産量は1万3951トン。JAおきなわ北大東支店の担当者は、13~14年産の生産量を1万2千トンと予想した。

<南大東>
 南大東村のサトウキビ生産関係者らとの意見交換会では、同村関係者らが干ばつ被害状況を報告した。7月の降雨量が平年比2・5%の2・5ミリにとどまった同村。仲田健匠村長は、8月中旬のまとまった雨で「島内の干ばつはほぼ解消した」と述べたが、「今後の十分な生育には時間を要する」と、収量に対する不安を口にした。
 同村さとうきび生産組合の儀間勉組合長からは、かん水施設が未整備の地域などでは「まだ地割れがある地域もある」との報告もあり、依然厳しい状況が続く。
 南大東村の生産量は、北大東村の3倍以上あるにも関わらず、コンクリートで固めた貯水池の貯水可能な総量が北大東村と比較して58・5%にとどまる。そのため、海とつながっていて塩分が多く含まれている自然池の水を多く利用せざるを得ない。使えば使うほど塩分濃度が高くなるため、サトウキビの生育を悪化させるという懸念がある。
 仲田村長は「この3カ月のまれに見る干ばつは、今の(貯水池の)整備状況では厳しい。なるべく早めの整備をお願いしたい」と強く要望した。