啓発から実践へ 普及の具体策探る しまくとぅばシンポ


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しまくとぅばの普及・継承の方法や課題を議論したシンポジウム「深く掘れ、わったーしまくとぅばぬ泉」の登壇者ら=14日、那覇市の県立博物館・美術館講堂

 9月18日の「しまくとぅばの日」を前に、NPO県沖縄語普及協議会と、しまくとぅばプロジェクトの合同企画による講演会・シンポジウムが14日、那覇市の県立博物館・美術館講堂で開かれた。しまくとぅばの普及に向けた機運が高まりを見せる中「啓発活動から具体的な継承活動を考える段階」(狩俣繁久琉球大教授)などの提起があり、言語継承の実践方法や課題について活発に意見を交わした。

 シンポジウム「深く掘れ、わったーしまくとぅばぬ泉」では、同協議会会長の宮里朝光さんが「戦前の沖縄には村や字ごとに独自の文化があり、それを表す言葉があった。しまくとぅばがなくなると各村の文化がなくなってしまう。沖縄の文化がどれだけ層が厚いものかを知ってほしい」と語った。
 写真家で琉球弧を記録する会代表の比嘉豊光さんも「千人近くのお年寄りの戦争体験をしまくとぅばで記録してきたが、日本語による記録とは、表情から話の中身まで違っていて衝撃だった」と紹介。琉球・沖縄の独自の文化やウチナーンチュが味わったさまざまな体験を残すためにも、地域で受け継ぐ言葉を守る意義を強調した。
 狩俣さんは「県人口140万人のうち100万人までが集中する中南部を中心に言葉を教えていくことで、大神島の言葉といった弱小方言の危機的状況を加速させてしまわないか危ぶんでいる。マイノリティーの言語や文化をどれだけ後世に引き継ぐことができるのかを考えてほしい」と課題を指摘した。
 詩人・演出家で県文化振興会理事長の平田大一さんは「しまくとぅば普及の進め方ではいろいろな意見があるだろうが、対立の構図をつくらず、できることから前に進めていくことが大事だ」と述べた。
 シンポジウムに先立ち沖縄語普及協議会の会員による寸劇もあり「しまくとぅばや島ぬ宝、語(かた)てぃ残(ぬく)さな島ぬチムグクル」の決めぜりふに、立ち見も出た会場から大きな拍手が湧いた。