「再ブレーク盤」遊佐未森『VIOLETTA THE BEST OF 25 YEARS』

リマスター＆新録で２５周年記念盤
　デビュー２５周年記念の２枚組ベスト。レーベル間の移籍が絡む場合、自社音源の割合の関係で選曲に無理が生じがちだが、本作は１１曲を新録して問題をクリアしつつ、新鮮な風を吹き込んでいる。

　１枚目は旧録音のリマスター音源集。どこか妖精を想起させる美しい裏声を生かした初期から時を経て、和やかなバンド演奏で明日への希望を誓う楽曲への変遷、そして幸せそうな声への変化は、一人の女性史そのものだ。
　最新録音集の２枚目は、２５年分を、年代順ではなくオリジナル風に並べた。賑やかに始まり、途中ムーディーな曲が続き、終盤に穏やかな暮らしに繋がるように再構築されているのが面白い。１９９０年当時の『夏草の線路』は目のクリクリした少年風だったが、新録では女性の立場で少年、もしくはかつての少年の夢を見守るような歌声が印象的。
　現レーベルの先輩、谷山浩子のファンも楽しめそうだ。本作から、年をとっても心を健やかにするヒントがもらえるはず。
　（ヤマハミュージックコミュニケーションズ・４４１０円）＝つのはず誠
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つのはず誠のプロフィル
　つのはず・まこと　１９６８年生まれ。総合化学会社、音楽宣伝会社勤務を経て、Ｔ２Ｕ音楽研究所設立。音楽市場分析、コンピレーションＣＤの企画・選曲などを手がける。
(共同通信)