腎臓病協議会が各地で闘病体験講話 長寿復活へ一助


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 人工透析治療を受けている患者でつくる沖縄腎臓病協議会(高良幸勇会長、会員650人)の会員が6月から、沖縄の健康長寿復活を後押ししようと、那覇市内の自治会や経営者の集まりなどに講師として出向き、闘病体験を語っている。同じ苦しみを体験してほしくないと病気のつらさ、社会生活への影響を打ち明け、食生活習慣の改善、健診や早期治療の大切さを訴える姿が共感を呼んでいる。

 日本透析医学会によると、2011年末時点で県内の透析患者数は約4200人。半数は生活習慣病である糖尿病から人工透析に至っている。高良会長(69)は「透析患者を1人でも減らせるように、病気の苦しさを伝え、予防につなげたい」と意気込んでいる。
 同協議会は慢性腎臓病(CKD)に関する知識の普及を目的にした那覇市の予防啓発事業を受託し、講師を派遣している。慢性腎臓病は悪化すると人工透析が必要になるケースがある。
 講師として赴いている協議会の会員は6人。今後も研修を開き、講師を増やしていく。来年7月までの間、計50カ所への講師派遣を目標にしている。
 今月2日、那覇市の宮城自治会館で宮城区民約50人を集めて開かれた講演会では、同協議会事務局長の宮城輝さん(58)が登壇した。40歳のとき、腎機能の数値が正常範囲から外れ、再検査を勧められたが放置していたという宮城さん。数値は悪化し、50歳で人工透析を受けることになった。観光施設の営業マンとして働き「飲食を通した付き合いが多かった。健康を過信し、暴飲暴食を続けていた。透析を宣告され、おののいた」と振り返る。
 人工透析は老廃物や毒素を尿としてこし出せなくなった腎臓に代わり、人工腎臓を使い、体外で血液をろ過する。
 宮城さんは週3日通院し、1回4~5時間を透析に費やしている。水分は1日500ミリリットルに、肉類や生野菜、果物も制限していることを説明した。「健診で再検査を勧められたら必ず受診してほしい。正しい食生活をして適度に運動する。10年前の健診結果と比較もしてほしい」と強く勧めた。
 講演後、区民からは「当事者の話は説得力がある」「子どもや孫にも聞かせたい」との声が寄せられた。自治会長の上原俊光さん(65)は「区民に特定健診の受診を勧めるとともに生活習慣病の恐ろしさも伝えたい」と話していた。(高江洲洋子)

<用語>慢性腎臓病(CKD)
 腎臓の機能が長期にわたり低下する病気。発症や進行には、糖尿病や高血圧、脂質異常症、メタボリック症候群などの生活習慣病が大きく関わっている。生活習慣の改善で予防が可能な疾患。

闘病体験の困難さを力説する宮城輝さんの話に聞き入る参加者=2日、那覇市宮城の宮城自治会館
宮城輝さん