知念正真さん死去 「人類館」作で岸田戯曲賞 71歳


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 1903年の人類館事件を題材にした戯曲「人類館」の作者、知念正真(ちねん・せいしん)氏が25日午後1時23分、肝臓がんのため沖縄市の病院で死去した。71歳。

沖縄市出身。告別式は27日午後4時から5時、沖縄市倉敷111の5の沖縄葬斎場で。喪主は妻祥子(ようこ)さん。
 知念氏は二松学舎大中退後、劇団・青年芸術劇場の研究生を経て、1963年に帰郷し琉球放送入社。演劇集団「創造」に所属して脚本や演出を手掛けた。76年に生み出した「人類館」は笑いを織り交ぜ、方言札や沖縄戦の住民虐殺など沖縄近現代史の内実や差別構造に切り込んだ。78年に劇作家の芥川賞といわれる第22回岸田戯曲賞を受賞した。
 同戯曲賞の受賞を記念した東京公演で演出を担った幸喜良秀さんは「沖縄100年史を1時間半にたたき込むんだと、2人で徹底して沖縄にこだわった。彼の残した作品の数々は、これから再評価されていくだろう」と悼んだ。
 東京公演で沖縄の「女」役に起用された北島角子さんは「ウチナー芝居の役者である私を新劇に初めて取り入れてくれた。あれがあったから今の一人芝居もある」と涙を流した。
 劇団「創造」で共に活動した詩人の中里友豪さんは「人類館事件を題材に、沖縄を突き放して笑い飛ばす作品は画期的だった。作品は差別の構造が変わらずに幕を下ろすが、現在の状況に通じている」と指摘した。