伝統の「運針」知って 和裁士の堤さん実演


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堤城作さんによる運針の実演を見学する沖縄工業高校生活情報科の生徒たち=25日、那覇市松川の同校

 日本の伝統的な手縫い技術「運針」を高校生に知ってもらおうと、沖縄工業高校で25日、和裁士の堤城作(つつみじょうさく)さん(49)=福岡県久留米市=の実演が行われた。

堤さんは素早く正確な運針によって約20分間で1枚の反物から背縫いまで縫い上げ、着物の形を浮かび上がらせた。その妙技を見た同校生活情報科1年の32人は「すごい」「早い」と目を輝かせた。
 実演の中で堤さんは、和裁で用いる鯨尺(くじらじゃく)を紹介しながら「1寸は親指よりも短い」「1尺は乗用車のハンドルの直径とだいたい同じ長さ」と述べ、尺貫法について高校生に分かりやすく表現した。
 上糸と下糸で縫うミシンと違い、1本の糸のみで縫われた和裁の着物は糸をほどくことができる。堤さんは「仕立て直しやリメークができ、再生能力を持つ」と話し、和裁の魅力を伝えた。
 同校生活情報科では被服や食物など、家庭科を重点的に学ぶ。実技を見学した仲本貴咲さん(16)は「ミシンを使わないのは難しそう」と話しながらも「1枚の布から着物を縫い上げる技術はすごい。堤さんから教わったことを被服の授業に生かしたい」と意気込んだ。
 堤さんは「和裁士という職業を知ってもらい、少しでも和裁や着物に興味を持ってほしい」と呼び掛けた。堤さんを沖縄へ招いた日本和裁士会県支部の熊谷フサ子支部長は「沖縄では染織の評価は高いが、和裁にはあまり注目されていない現状がある」と指摘し「子どもたちにも生活の中で針を持ち、和裁に親しんでほしい」と話した。