沖縄戦継承めぐり若者らシンポ 県の平和のウムイ事業


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沖縄戦の教訓を次代に継承するため、多彩な提案が出されたパネル討論=28日、糸満市の摩文仁の平和祈念資料館平和祈念ホール

 【糸満】県の「子や孫につなぐ平和のウムイ事業」で、新たに収録された沖縄戦体験者300人の証言映像が28日、糸満市の平和祈念資料館で一般公開された。

公開に合わせて「沖縄戦の教訓をいかに次代に継承するか」をテーマにシンポジウムが開かれた。沖縄国際大学教授の吉浜忍さんの基調講演や沖縄戦体験者、若者らによるパネル討論があり、ウムイ事業の継続、地域での追体験や「しまくとぅば」での継承、ネットを活用した発信などが提起された。
 シンポジウムには約80人が参加した。基調講演で、吉浜さんは沖縄戦について「住民を巻き込んだ地上戦で、悲惨さの極致だ。二度とあってはならない。沖縄戦の記憶を記録し、継承していく必要がある」と強調した。県内の若者の8割が沖縄戦について知りたいと思っているが、理解が弱い現実を指摘した。継承の方法として「歴史の真実は現場にある」という観点から足元を見詰め、体験者との追体験や戦争遺跡を歩くといった当事者意識が持てるような取り組みを挙げた。
 パネル討論では吉浜さんをはじめ戦争体験者の與古田光順さん、世界若者ウチナーンチュ連合会代表の玉元三奈美さん、フリーアナウンサーの宮城麻里子さんが登壇。與古田さんは今後も自身の経験を語り継ぐ決意を述べ、「恒久平和のモデルが沖縄で実現してほしい」と語った。
 ウムイ事業に関わった玉元さんは体験者から直接聞くことの意義を強調。しまくとぅばで語る体験者の表情などを挙げながら「本当の沖縄戦について、しまくとぅばで語り継ぐことを提案したい」とした。
 宮城さんは沖縄戦について幅広い視点から県内外に発信し、共感を広げていく活動を提案した。
 会場からは「戦争体験は一人一人違う。ウムイ事業を継続してほしい」「年間を通し、学校のカリキュラムの中で平和教育に取り組んでほしい」などの意見が上がった。
 同資料館では今後、ハワイや南洋での証言50件も随時公開する。関連行事として離島や沖縄本島中北部など県内7カ所でも成果報告展を開く。