美里工、八商工、沖尚、宜野座が4強 県秋季高校野球


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 第63回県高校野球秋季大会第11日は29日、沖縄セルラースタジアム那覇などで準々決勝を行い、第1シードの美里工は嘉手納に7―1で快勝して21年ぶり3度目のベスト4入り。

八重山商工は3―1で知念を破って7年ぶり4度目、沖尚は2―0で真和志に完封勝ちして2年連続20度目、宜野座は延長十四回の末に浦添商を7―4で退け2年連続8度目の準決勝進出を決めた。勝った4校は、来春の全国選抜大会の選考資料となる九州地区大会(10月26~31日・沖縄)の出場権を獲得。準決勝は5日午前10時から、決勝は6日午後1時から、沖縄セルラースタジアム那覇で行う。

◆美里工/投打に隙なく快勝
 最後の打者から12個目の三振を奪い21年ぶりの4強進出を決めた瞬間、マウンドに立つ背番号1の表情が和らいだ。
 美里工のエース伊波友和が、嘉手納の強力打線を相手に1失点完投。調子は決してよくなかったというが、変化球を主体とした低めの制球で相手打線をかわした。12奪三振に本人は「びっくりした。出来過ぎ」とはにかみ、神谷嘉宗監督は「バッテリーが粘り強くやってくれた。打たせて取る気持ちで投げていたのが結果的によかったんじゃないかな」とうなずいた。
 エースが力投すれば、攻撃も当然のように呼応する。一回、3連続四球と右前打で2点を先制。二、三回と着実に加点し、七回には女房役の與那嶺翔がセーフティーバントで広げた好機に伊波が2点適時打を放って勝負を決めた。ビッグイニングこそなかったが、3試合連続の2桁安打はさすがだ。
 まずは九州大会4枠をがっちりつかんだ。「僕らは第1シードで、周囲も期待している。大きな関門をクリアできてほっとした。次は1位通過というステップを目指したい」と指揮官。伊波も「センバツで勝つのが目標」と上を見据える。
 優勝候補にふさわしい戦いで順当にベスト4に駒を進めた美里工。投打の歯車を狂わすのは容易ではなさそうだ。(大城周子)

◆八商工/機動力で逆転勝ち
 初回裏、1点を追う八重山商工。先頭の真玉橋樹が右前打で出ると、すかさず3番原田泰成が二塁打を放ち同点に追い付いた。
 ここからが八商工・機動力野球の真骨頂だった。
 四球などで2死一、三塁となった後、ダブルスチール。ホームを陥れた三走の原田は「取れるところで取っておきたかった。気持ちで突っ込んだ」と振り返り、逆転を成功させ「勢いを付けられた」と喜んだ。
 二回以降もエンドランなど足を使ってかき回し、得点機をうかがった。
 マウンドではエースの馬場(ばんば)寿希矢が踏ん張った。初回に先制点を奪われたが、二回以降はバックにもり立てられながら無失点で完投した。
 九州大会出場を懸けた試合に「人生で一番緊張した」と言い、立ち上がりは「ボールに指が掛からず、曲がらなかった」。しかし雨で約1時間の中断があった際、ブルペンで修正。最終回は3者三振で勝利を決めた。
 京都府出身。八商工の野球部だった同郷の先輩に誘われ、中学3年のころ石垣島に移り住んだ。チームを引っ張った右腕は「自分のピッチングで次は美里工を倒す」と準決勝に意欲を見せた。(宮里努)

◆宜野座/延長14回 一丸3点
 1点を巡る攻防に、土壇場の好守、そして延長戦。「何が起こるか分からない」高校野球を体現するような4時間14分だった。延長十四回の熱戦を制した宜野座ナインは、すっかり赤く日焼けした顔で歓喜の輪をつくった。
 点を取っては取り返され、取り返されては踏ん張る。八回に浦添商業が同点に追い付いた後は互いにゼロ行進が続く。延長十四回、宜野座が2死一、二塁から、當眞圭介と伊保拓海の連打で3点を奪取。引き分け再試合まであと1イニングというところで、ようやく勝負が付いた。
 「総力戦だった」という東亮監督の言葉通りの内容だった。連投の疲れがあった先発のエース伊保が四回途中で降板したが、六回途中からマウンドに上がった3番手の知念諄也が公式戦初登板ながら「勝つしかない、とにかく気持ちで投げた」と1失点の好投。延長十回1死満塁のピンチも、三振と二塁手渡久地涼の好守で切り抜けた。
 元気の良さが印象的なチームで、主将でもある當眞は「楽な試合はない。チャンスもピンチも笑顔を絶やさないことが勝利につながる」と言う。準決勝の相手は、3季連続の甲子園出場を目指す沖尚。當眞は「今日のようにいい雰囲気で試合ができれば負けることはない。強い気持ちを持って迎え撃つ」と頼もしかった。(大城周子)

◆沖尚/エース山城 2連続完封
 沖尚はエース山城大智が2試合連続の完封勝利を果たした。七回には三塁打を放ち、自ら追加点のホームを踏むなど、投打にわたる活躍で九州大会出場へ導いた。
 真和志との準々決勝。「きょうが一番のヤマ場。この試合で勝たないと意味がない」と4強入りへの強い思いを胸に臨んだ。
 130キロ台の直球を中心に、スライダー、カーブなど変化球を織り交ぜてテンポ良く投げ込んだ。
 ボールが高めに浮いた場面もあったが、捕手の伊良部渉太が低めに抑えるようリード。
 「九州が懸かっていたので、(投球に)気持ちが入っていた」と伊良部。「ストレートがきていたので、これで押した。狙われたら変化球でかわした」と振り返った。
 8奪三振で許した安打は2本だけ。三塁を一度も踏ませなかった。
 最後の打者は気合の込もった141キロで三振に仕留めた山城。「ピンチもあったが、ゼロで抑えることができた。100点に近い投球」と胸を張った。
 一方、打線は下位からもチャンスをつくったが、9安打で2点止まり。残塁は10あり、比嘉公也監督は「残塁の多さがすべてを物語っている。反省して準決勝に備えたい」と次戦を見据えた。(宮里努)

<きのうの結果>
▽準々決勝
美里工 7―1 嘉手納
八商工 3―1 知念
宜野座 7―4 浦添商
  (延長十四回)
沖尚 2―0 真和志

<10月5日の試合>
▽準決勝
【セルスタ】10時
美里工―八商工
宜野座―沖尚

美里工―嘉手納 12奪三振1失点の好投で勝利に貢献した、美里工のエース伊波友和=29日、北谷公園野球場(諸見里真利撮影)
八商工―知念 1回八商工2死一、三塁、ダブルスチールで本塁を奪う原田泰成=29日、沖縄セルラースタジアム那覇(花城太撮影)
宜野座―浦添商業 延長14回宜野座2死一、二塁、勝ち越しの適時打を放つ當眞圭介=29日、北谷公園野球場(諸見里真利撮影)
真和志―沖尚 直球を主体にテンポ良く投げる沖尚の山城大智=29日、沖縄セルラースタジアム那覇(花城太撮影)