教科書採択、竹富町に是正要求へ 文科省、教育行政で初


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 【東京】文部科学省は30日までに、八重山採択地区協議会が選んだ保守色の強い育鵬社の中学校公民教科書を拒否し、東京書籍の教科書を配布した竹富町教育委員会に対し、地方自治法に基づく是正要求の指示を出す方針を固めた。

10月初旬にも下村博文文科相名で文書を出す。国の是正要求は地方自治体に対する最も強い措置で、教育行政では初めて。同町が是正要求に従わない場合は、違法確認訴訟の提起も検討する。
 政府は昨年度まで町教委を教科書の無償措置対象外としながらも、東京書籍版の使用を事実上認めてきたが「美しい国づくり」を目指す安倍政権は「違法状態は放置できない」(義家弘介文部科学政務官)として、是正要求で国の方針に従わせるべきだと判断した。
 自治体は是正のための法的義務を負うが、仮に従わなかった場合でも罰則はない。文科省は竹富町が是正に従わない可能性も考慮し、地方自治法の改正でことし3月から可能になった自治体に対する違法確認法訴訟の提起も本格的に検討する。
 文科省の義家弘介政務官は本紙の取材に対し「1年以上にわたって違法状態が続いている異常な事態を放置するわけにはいかない。特定の教科書を使用せよという指示ではなく、無償措置法に基づいて教科書採択地区協議会の答申に沿った教科書を採択すべきだ」と話した。

<用語>是正要求
 地方自治体などの事務処理に法令違反があるときや、明らかに公益を害していると認められる場合に、国が是正を求める制度。地方自治法で定められている。自治体側は、改善措置を取る法的義務を負うが、従わなくても罰則はない。過去には、総務相が住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)への接続を拒んだ東京都国立市、福島県矢祭町に出した例がある。地方教育行政法も、文部科学相が教育委員会に是正要求できるとしているが、児童生徒の教育を受ける機会が侵害されていることが明らかな場合に限られている。