【名護】かつて那覇の漁師が豊漁祈願に使った大型爬龍船(はりゅうせん)3隻を、来年3月をめどに名護市で復活させる取り組みがこのほど始まった。現存する木造サバニでは、県内最大級の長さ9メートルあり、こぎ手だけで20人が乗れる。
船体を修理して那覇のウミンチュの心意気や思い出が詰まったサバニを生き返らせ、名護の地域振興に生かそうと関係者の期待が高まっている。
爬龍船は1990年代後半まで、那覇地区漁協(国吉真孝組合長)が泊港で豊漁を祈願する「泊ハーリー」で長年使われた。船体は緑(那覇)、黒(泊)、黄(久米)で那覇ハーリーと同じ色。
組合員の減少などで途絶えたため、同漁協が2004年ごろ、奥武島(南城市)のハーリー実行委に寄贈した。
最近保管場所がなくなり、名護市の関係者に譲られた。
サバニの操船・造船技術継承を目的に活動する団体「フーカキサバニ」の森洋二さんらと、わんさか大浦を運営する二見以北地域振興会(会長・宜寿次聰二見区長)が協力して受け入れ態勢を整えた。
9月24日には名護の関係者と南城市ハーリー実行委役員の阿部圭介さんも立ち会い、汀間漁港で船を浮かべて船体の損傷状況を確認した。破損したり、水漏れしたりするが、修復は可能という。来年3月に開くわんさか大浦のイベントで、海上を走るかつての雄姿を披露する予定だ。
大人数が乗れる大型船の利点を生かし、修学旅行生の体験活動に活用する計画もあり、振興会の宜寿次会長は「観光資源として幅広く生かしたい」と期待を語った。
那覇地区漁協の国吉組合長によると、爬龍船は那覇の爬龍船保存会(現在は解散)が建造した。
国吉組合長は「かつては近海マグロも多く、組合員も多かった。そのころのウミンチュの心が残っている船だ。大事に活用してもらえたらありがたい」と復活を待ち望んだ。