文科相、竹富教科書で是正要求 県教育委員会に指示


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【竹富】竹富町教育委員会が教科書の同一採択地区の石垣市、与那国町とは違う中学校公民教科書を独自に採択している問題で、下村博文文部科学相は18日、竹富町教委の対応が教科書無償措置法に違反しているとして、地方自治法に基づく是正要求をするよう県教育委員会に指示した。

教育行政で国が是正要求するのは初めて。是正要求は国が地方自治体に対して行う最も強い措置で、従う義務が生じる。罰則規定はないものの、竹富町教委が従わない場合、文科省は違法状態にあるとの司法判断を得るため、違法確認訴訟を起こすことも検討している。
 八重山採択地区は2011年度の教科用図書八重山採択地区協議会で保守色の強い育鵬社版公民教科書を選定し、3市町教委に答申した。竹富町教委は、教科書調査員がマイナス点を多く挙げた育鵬社版が協議会委員の無記名投票で選定されたことなどを問題視し、独自の協議で東京書籍版を採択した。
 文科省は協議会の「規約に従ってまとめられた結果」(答申)と異なる教科書を竹富町教委が採択したことの違法性を指摘。「無償措置法に違反する状態をこれ以上放置することはできない」として、県教委に必要な措置を講じるよう求めた。
 文科省はこれまで、竹富町教委の教科書を無償給付せず、育鵬社版を採択するよう直接指導してきた。竹富町教委は地方教育行政法で採択権は各教育委員会にあると定められているとして、採択の正当性を主張。竹富町教委は有志から東京書籍版の現物給付を受けて生徒に配布し、使用している。無償措置法違反という指摘についても、竹富町のみを無償の対象外とすることに異議を申し立てている。
 地方教育行政法にも是正要求の規定はあるが、「児童、生徒等の教育を受ける機会が妨げられていること」や、「その他の教育を受ける権利が侵害されていることが明らか」な場合に限られており、文科省は地教行法の規定は満たしていないと判断し、地方自治法の規定で是正要求を出した。
 県教委は、23日の定例教育委員会で対応を協議する。竹富町教委は県の指導を待って是正要求への対応を決める。

◆残念な思いだが重く受け止める/諸見里明県教育長
 八重山地区の中学校公民教科書については、同一の教科書採択に向けて3市町教育委員会と話し合いを重ねているところだ。こうした中で、文部科学大臣からの是正要求の指示については残念な思いだが、重く受け止めている。今後は県教育委員会で対応について協議していくことになると考えている。