八重山教科書 是正要求に抗議相次ぐ


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文科省の是正要求の撤回を求める声明を出す、おきなわ教育支援ネットワーク=22日、県庁記者クラブ

 八重山教科書問題で下村博文文部科学相が県教育委員会に是正要求を指示したことに、教育関係者や市民団体から抗議と撤回を求める声が相次いでいる。要請文はそれぞれ、2011年の教科用図書八重山採択地区協議会で育鵬社版教科書が採択された経緯の問題点を指摘。国が不当に地方教育行政に介入していることへの危険性を訴えた。

竹富町教育委員会に対しては「国の圧力に屈せず頑張ってほしい」と激励した。

◆「文科省こそ違法」/子ども教科書全国ネット21
 【東京】教育改革を掲げる安倍政権が、竹富町を指導するよう県教育委員会に是正要求を指示した件で、教科書検定に詳しい「子どもと教科書全国ネット21」の代表委員を務める石川康宏氏、尾山宏氏ら10人は22日、「中央集権的な教育体制をつくる既成事実づくりを進めるための見せしめだ」として是正要求の撤回を求める抗議声明を発表した。
 石川氏らは、下村博文文部科学相が竹富町の対応に対し「無償措置法に違反している」「違法状態を放置できない」と発言していることについて「地区内が同一教科書になっていないのが違法というなら、竹富町だけでなく石垣市も与那国町も『違法状態』である」と指摘した。
 また「無償措置法では採択地区内で同一教科書を採択すれば(教科書を)無償供与することになっているので、竹富町だけでなく、石垣市・与那国町にも無償供与はできないはずだ」として「文科省こそが『違法状態』を続けている」と対応を批判した。
 その上で県教育委に対し、竹富町のみ「是正要求」するのではなく、三市町による一本化のための協議を進めるという従来の方針を堅持するよう求めた。竹富町教育委に対しては「文部科学相・文科省による強権的な『是正要求』に屈することなく、竹富町の子どもたちにとって最も適した教科書採択を続けるよう要請する」とした。

◆県内も撤回求める声
 八重山教科書問題で文部科学省が県教育委員会に是正要求を指示したことを受け、退職者教員でつくる「おきなわ教育支援ネットワーク」の佐久川政一、伊波興信共同代表らは22日、県教育庁に盛島明秀義務教育課長を訪ね、竹富町教育委員会に是正要求しないよう求めた。盛島課長は「23日に開かれる県教育委員会の会議で慎重に審議される」と答えた。
 要請文は「文科相の指示は安倍政権の憲法改悪の動きや、集団的自衛権の解釈を見直し『戦争のできる国』の担い手をつくろうとする動きと連動している」と危機感を示している。その上で(1)文科省に是正要求の撤回を求める(2)竹富町教委に是正要求しない-ことを求めている。
 一方、抗議声明も相次いでいる。子どもと教科書を考える八重山地区住民の会は22日、八重山の教科書問題で文部科学省が県教育委員会に対し、竹富町教育委員会の「違法状態」を解消するよう是正要求したことに抗議し、撤回を求める要請文を文科省へ送付した。
 育鵬社版公民教科書を選定した教科用図書八重山採択地区協議会の答申に、竹富町教委が拘束されないことは「文科省見解からも明らか」として文科省の違法判断は「事実誤認」だと指摘している。
 県退職教職員会(仲村勝彦会長)は、21日の抗議声明で「竹富町教育委員会に何ら法的瑕疵(かし)はない。地方教育行政法と教科書無償措置法の相反する法律を放置してきた文科相自らの怠慢を反省すべきだ」と理不尽さを訴え、是正要求の撤回を求めている。