県勢同士初対決へ 秋季九州高校野球


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 高校野球の秋季九州大会(第133回九州大会)第4日は30日、沖縄セルラースタジアム那覇で準決勝を行い、初優勝を狙う美里工と、2季ぶり3度目の優勝を目指す沖縄尚学の県勢2校が決勝へ駒を進めた。

県勢同士の決勝は大会史上初。美里工は神村学園(鹿児島)を5―1で下した。三回1死満塁から押し出し四球と併殺崩れで2点を先制すると、その後も六回に1点、七回に2点と好機で確実に加点した。先発の伊波友和は11安打を浴びながらも、要所を締めて1失点で完投した。沖縄尚学はエース山城大智が1安打で完投し、鎮西(熊本)を4―1で退けた。打線も八回を除く毎回の13安打と相手投手を攻略した。五回に相手失策に乗じて1点を先制。六回は重盗に2長打を絡めて3点を追加した。決勝は31日正午から同球場で行われ、優勝校は明治神宮大会(11月16日開幕・神宮球場)に出場する。

<沖尚>難投手攻略 13安打/山城圧巻 1安打完投
 許した安打は、わずか1本。失点した七回以外は三塁を踏ませない圧巻の投球だった。「一つ一つのアウトを確実に取ろうと考えた」。沖尚のエース山城大智は気持ちを切らさず、最後まで全力で打者と向き合った。
 本調子とは言えなかった。初回のマウンドで「直球が伸びずに打者の手元で沈んでるように見えた」。捕手の伊良部渉太も「直球も変化球もいつものような切れがない」と感じた。それでも内外の出し入れを意識し、打たせて取る投球で初回を3人で終わらせた。
 二回に四球で走者を背負ったが、投前に小フライで上がった犠打を山城がワンバウンドで取り、一走と打者を併殺にする好守備を見せた。山城は「ダブルプレーが取れて良かった。あれで流れも良くなった」とはにかんだ。七回に高めに浮いた球を右前に運ばれて「失投だった」と悔やむが、「しっかりと修正しよう」と切り替えた。
 被安打1の完投に「野手に助けてもらった」と仲間の支えに感謝する。理想としているのは10安打を許しても無失点で切り抜ける投球で、「(1失点は)理想とは真逆だ」と反省も口にした。「もっと一球にかける集中力を高めて甲子園でも勝てる投手になりたい」と口元を引き締めるエースは、大舞台に向けてさらなる成長を誓った。(平安太一)

<美里工>目覚めた打線 着実/仕掛けて躍動 初決勝
 送って、打って、かえす。美里工が高校野球の「王道」を歩む攻撃で、初の決勝進出を決めた。ここまでの2試合はいずれも1―0での勝利。1割5分5厘とくすぶっていた打線が本来のつながりを取り戻した。
 選抜大会出場をぐっと引き寄せるベスト4の関門を突破し、この日、神谷嘉宗監督はナインにこう呼び掛けていた。「思い切ってがんがん仕掛けていこう。伸び伸びやろう」
 まずは三回。先頭の伊波友和が中前打で出塁、犠打と死球で1死一、二塁としてから西藏當祥がセーフティーバントで好機を広げ、押し出し四球で1点を奪う。続く花城航の打球は二塁方向へのゴロだったが、必死の走りが併殺崩れを呼んでさらに1点を加えた。
 七回には、1死一塁から西藏當の打席でエンドランをかけ、2死二塁。3番宮城諒大が二塁打、4番花城が三塁打と連続適時打で2点を挙げた。「好球必打で後ろにつなごうという意識だった」と西藏當。結果的にアウトになったエンドランもあったが、攻めの姿勢で相手を揺さぶった。
 今大会初安打の宮城は「全然打てず弱気になっていたけど、あの1本で気持ちが楽になった」と言い、花城は「(投手の)伊波に『お前たち打ってくれよ』と冗談交じりに言われていた。投手を助けられてよかった」と笑う。沖縄高校野球の新勢力が、投打に洗練されてきた。
(大城周子)

<きのうの結果>
▽準決勝
沖尚 4―1 鎮西(熊本)
美里工 5―1 神村学園(鹿児島)

<きょうの試合>
▽決勝
【セルスタ】正午
沖尚―美里工

鎮西―沖縄尚学 相手打線を1安打に抑える力投を見せた沖尚のエース・山城大智=30日、沖縄セルラースタジアム那覇(諸見里真利撮影)
美里工―神村学園 7回美里工2死二塁、左前へ適時二塁打を運ぶ宮城諒大=30日、沖縄セルラースタジアム那覇(渡慶次哲三撮影)