【3 市民の声】
名護市では当該埋立事業に係る市長意見を沖縄県知事に提出するにあたり、平成25年8月1日から10月31日の間、名護市民および名護市外に在住する名護市出身者からの意見募集を行った。その結果、子供から戦争を体験された高齢者までさまざまな世代の市民から意見が寄せられた。これらの市民意見については、当該事業に関しては「反対である」という意見が圧倒的多数を占め、「賛成である」という意見も少数みられるものの、当該事業実施に伴う自然環境や生活環境への影響を危惧し、安心・安全な生活が脅かされるのではという切実なる意見が多く寄せられた。以下は実際に寄せられた市民の声である。
(1)移設に反対する声
〈自然環境の観点〉~美しい自然は私たち沖縄の財産~
・われわれの先祖から生きてきた豊かな海、ジュゴンが遊泳する海を埋めること自体、自然破壊であり世界の潮流に反する。
・名護親方は六諭衍義で、自然を大切にすることを教えている。
・埋め立てにより大浦湾の自然や辺野古ダム周辺の自然が破壊され、貴重な生き物たちが消えることは火を見るよりも明らかである。
・わんさか大浦パークでは、自然を活用した仕事づくりに取り組んでいるが、埋め立てによる自然環境への影響が懸念される。
・僕は沖縄のきれいな海が大好きです。夏は父や弟と釣りや海水浴をします。でも飛行場ができると大好きな海で遊べなくなるからです。
・辺野古のキレイでジュゴンがいる海がなくなるのは、いやです。なにより、沖縄のキレイな海を埋立てるなど、ありえないです。
・ジュゴンやニモがすむうみに、きちをつくらせないでください。きれいなへのこのうみをまもってください。
・海をうめ基地をつくるのは自然をこわすことなので反対です。今のかんきょうだと気持ちよく暮らせるのに、基地をつくってぎゃくにこのまちにくらす住民がこまるだけ。あきらめるまでいいつづけます。
・沖縄戦で、陸がすべて焼け野原になった後、海の幸で命をつなぎ、子どもたちを育てた体験が、二度と戦場の哀れさを子孫に体験させたくない思いと、自然に対する深い感謝という二つの柱となって支えてきた。
・辺野古に住んでいた94歳の老女が、方言交じりで懸命に訴えていた光景が目に焼き付いて離れない。「戦後、命からがら帰ってみると、草一本も生えていない。私の命を助けてくれたのは海。海に入ると海草、貝、魚と口に入れることができた。その海を傷つけたくない」と涙ながらに話しておられた。
〈生活環境の観点〉~騒音、墜落、事件・事故への不安・恐怖~
・久辺3区は現状においても実弾射撃訓練、廃弾処理、夜間飛行訓練等による騒音被害が著しく、代替施設建設により生活環境・学習環境が大きく影響される。
・久辺3区と西側の許田、幸喜、喜瀬などは航空機による被害の状況は、我慢の限界。
・代替施設建設に伴い、シュワブの人口が6400人増えるとのことだが、これまでもシュワブ周辺地域では米軍人等による事件・事故が多数発生している。周辺地域住民の安全・安心の保証がない辺野古への移設には、絶対反対。
・米軍の飛行機による騒音は深刻で、現在でも子どもたちの学習環境に支障をきたしている。教育関係者として、これ以上教育環境が悪化することは容認できない。
・ヘリが飛んで、授業に集中できなくて困っています。ヘリをなくしてほしいです。
・オスプレイがいつ墜落するか分からないので、いつもびくびく過ごしたり、騒音のせいで授業が中断されるのもいやなので反対。
・オスプレイが落ちるのがこわいから、あたらしいきちはいらないと思います。
・騒音被害や飛行機墜落の危険性、米軍人・軍属関係者による犯罪被害など、県中南部の基地周辺の状況を考慮すると、名護市に移設されれば生活環境は確実に悪くなる。
・作業ヤード建設に係る埋め立てにより、辺野古川の河口が狭まり、洪水被害が増大し、辺野古区民の生活が脅かされる。
・名護市民は、安全で平和な生活を営む権利を憲法が保障しているが、現実には米軍基地が集中し、事件・事故や騒音が相次ぎ平和に生きる権利が大きく侵害されている。
〈基地の過重負担等の観点〉~国土の0・6%に74%もの米軍専用施設~
・沖縄の基地負担軽減って一体何?名護は沖縄じゃないの?
・沖縄には、これ以上基地があってはいけないと、僕は思います。僕は、基地をへらし、良い日本にしたいです。
・辺野古移設は普天間の危険性を減らすということだが、右のポケットから左のポケットに移すようなもので、負担軽減にはならない。
・安倍政権が日米安保条約を維持したいのであれば、普天間移設は沖縄県外に求めるべきである。日本の安全は全国民が等しく負担すべき。
・負担軽減どころか、新たな機能をも備えた巨大な基地を造ろうとしている。基地あるがゆえに苦しみを訴える県民の切実な思いを踏みにじるものだ。
・0・6%の沖縄に74%の基地が集中し、まさに「基地の中に沖縄」があると表現され、県民の生命・財産・自然破壊が続いている。もう我慢できない。
・これ以上、沖縄県が日本の犠牲になって辺野古に基地を造らせることは、先の戦争で尊い命を失った人々に対する冒涜(ぼうとく)行為である。
・小さな沖縄に7割以上の基地を負担させ、“軽減”とはうそ。他県の使用していない飛行場に移すことが税金の無駄遣いを防ぎ、早道。基地を必要としない国づくりをみんなで考えよう。
・政府・本土に対して応分の基地負担を粘り強く声高に主張しよう。いかなる理由があろうと、普天間の県外移設を断念してはいけない。
・「県外国外への訓練移転で負担軽減だ」と強調しているが、沖縄に常駐している限り根本的解決にはならない。2プラス2で「辺野古が唯一」と言っているが、あからさまな沖縄差別。「唯一の解決策」との決めつけ議論はもうやめてほしい。
〈日本政府に対する不満・怒りの声〉~基地の押し付けに反対~
・人口が少ないからという理由で、命の差別を平気で行う政府に、私は声を大にして訴える。「人口の多少にかかわらず人の命に重い軽いはない」。
・日本政府は米国の政見に応じ、県民の意向をおろそかにし、だしにして日本の国を守る政治を行っている。絶対に許せない。
・「美しい日本」と唱える首相は、沖縄は日本でないと考えているのか。沖縄に基地を押し付け、辺野古の海を破壊して基地を建設しようとしている。
・基地を押し付けるのは、差別だ。戦前の美しい沖縄県を取り戻すことが、大戦で多数の犠牲を出した沖縄の人々への国としての償いだ。
・辺野古移設問題は差別政策以外何物でもない。何かというと沖縄の負担軽減だと言い、狭い沖縄に新たな基地を造る。何が軽減か、言語道断。
・国の押し付け政策や振興策に振り回されることなく断じて新たなる基地建設に反対する。
・オール沖縄で反対をしているにもかかわらず、それを押し付けるということはまさに民主主義の否定であり、政治の取るべき道ではない。
・県民の8割がNOをつきつけているのに、移設計画が浮上すること自体が疑問。危険な新基地を、なんとしても沖縄にという政府の強い意図が感じられる。政府の“説得”ということが理解できず、”脅迫”にすぎない。
・沖縄差別の歴史に終止符を打つためにも、新基地建設を撤回させよう。この機会を逃せば、いつまでも差別される。米国とその手下となっている日本政府の横暴を、絶対に許してはいけない。
・私は第2次大戦で日本軍の基地があったため、父を失い家や財産も失った。日本政府はまだ沖縄(名護)の住民を第二国民、いやそれ以下の国民扱いにするのか。断じて許せない。
〈未来へ名護市・沖縄の財産を継承する〉 ~子どもたちの明るい未来のために~
・基地の県内移設では何も解決しない。子や孫たちの時代にまで基地問題を残したくない。次代に継げるのは、豊かな自然環境と平和、心豊かな名護市です。
・市民のかけがえのない生命・自然を守りぬき、真に平和で住みよい沖縄を子や孫に引き継ぐという責務を肝に銘じて、市民一丸となって頑張ろう。
・子供たちがオスプレイ等の低空飛行訓練で、勉強中や遊んでいるときに耳をふさぐ光景や、サッシの中で過ごさなければならないような環境にならないか心配。将来安全で静かな故郷を残したい。
・これから結婚し子どもを産む女性にとって、今のままの自然環境が大事です。子どもたちのすこやかな成長のために、新基地建設は絶対反対です。
・大学時代、宜野湾に住んでいたので、あの生活環境が名護北部に来ると想像すれば、恐怖と嫌悪感を抱く。子孫に平和で安心して過ごせる環境、当たり前の環境を与えることが大人の務め。
・この島に生きる一人の人間として、子どもたちに引き継ぐ未来を考えたとき、今ここにいる大人の責任として、基地を造らせるわけにはいかない。
・豊かな自然はこれから未来を生きていく子どもたちの手の触れる場所にあるべき。米兵に脅かされない本当の豊かさを、これから生きていく子どもたちに残してあげたいと切に願う。
・お金に惑わされない強い信念を持って、将来の子、孫のために最後まで頑張ろう。
・国からの交付金を多くもらうために犠牲を払うより、次世代の名護市のために何を残すことができるか、しっかり考えて行動すべきである。自然破壊や基地の“負の遺産”などではない。
・「あけみおのまち名護」、まさしく山紫水明・やんばるの自然豊かな文化と人々の暮らしの未来永劫(えいごう)を希求するものとして、幾重に育んできた過去から現在、現在から未来への贈り物である。
〈経済的な観点〉~基地に頼らなくてもやっていける~
・「ランク1」の海域を埋め立てるのは、観光立県を目指す沖縄県にとって大きな損失。
・観光の柱は、“美しい自然、海、伝統的文化、芸能、街並み等の地域景観、地場産の海産物”ではないか。辺野古に基地を造ることは、そのすべてにマイナス効果をもたらす。
・米軍基地は経済的にマイナスになっており、今後の観光、運輸、情報産業などで妨げとなる。
・基地で栄えた町はない。破壊された自然は二度と元には戻らない。お金をもらって危険を受け入れるなんておかしい。普天間の機能は本国へ移すべき。
・基地経済に依存せず豊かな自然を活(い)かした自主経済を目指し、安心安全な地域で、お金では買えない命・人間の真心を守りたい。
・名護市は今、移設ではなく基地を減らし大自然を守る事業に取り組むべきだ。
・名護市は「基地に頼らないまちづくり」を掲げており、地域住民の意識も「自立した地域づくり」に取り組むという姿勢に大きくシフトしてきている。
・一部の方たちが金のために進めている。名護市の経済や町の繁栄に長期的にはならないし、市民投票でも結論は出ている。
・二見以北10区は力を合わせ、なんとか活性し、人口増加を願って頑張っている。自然を活かし、より多くの方々に来ていただける地域を作りたく頑張っている。基地ができれば誰が来てくれますか。この地域が自立し、自分たちの力で多くの方々に来ていただいて、活性化を図るために絶対基地はだめ。要らないし、造らせない。
・基地返還地の発展は、沖縄経済が「基地依存」ではないことがあらためて証明された結果。この結果を見ずして新たな基地建設をするということは、日本政府が沖縄にさらなる足かせを強要し、経済発展を阻止しているとしか思えない。美しい海を埋め立てての観光立県はありえない。
〈その他〉~ウチナーンチュの魂と誇りにかけて~
・ウチナーンチュの魂と誇りにかけて、戦争につながる基地建設に反対します。
・山原や名護の美しい自然を守り活かして生きていくことが、名護や山原の人々のアイデンティティーである。
・普天間代替施設の建設を県内で容認することは、過重な歴史を経てきた沖縄にとって新たな負担と差別を押し付け、沖縄の自然だけでなく自信と誇りを喪失させる何ものでもない。
・戦後アメリカの占領下で国際法規にも違反して、銃剣とブルドーザーで強奪された。辺野古の新基地建設を認めると、歴史上初めて自らの意思で基地建設させることになる。市民、県民、人間としての誇りにかけて拒否すべきものだ。
・先祖代々の為にも頑張りたい。名護で生まれ、南米で育ち、名護に帰ってきた。市内に向かう車で大浦湾を見ながら、いつも口にするのは基地問題。海を眺めて、いつも胸が痛む。どうか現実にならず、夢で終わってほしい。
・県外で働く娘の職場では「基地は沖縄が引き受けるべき」「基地で生活が成り立っている」「またさわいでいる」等で、何も反論できない状況で悔しいです。
・心臓を患っているわが身ですが、“いざ鎌倉”というときは、行動を起こさなければならないと思っています。
・一部の有力者(推進派)が上京し閣僚参りをしていることに対し、怒りをとおり超して、情けなくて涙が出る。
・戦争を体験した老人です。基地は恐ろしい戦争へのつながりです。だから造らせない判断を。知事は最後までNOと跳ねのけてください。お願いします。
・戦争世代から子どもたちまでに至る名護市民の願いに応え、未来に続く名護の自然と文化の豊かさを守り、沖縄からアジアに向けての「平和と共生」を発信する使命を果たしていただくことを、心からお願いしたい。
・知事は、市長意見、市民の民意を受け止めて、埋め立て申請を不承認にする責務がある。
(2)移設に賛成する声
〈国防、抑止力の観点〉~国防上、沖縄に基地が必要~
・国防上、絶対基地は必要で、沖縄から基地がなくなれば真っ先に占領され、チベットと同じ運命をたどることになる。辺野古に基地を移すべきだと思う。
・中国が尖閣と沖縄を占領しようと狙っているのは明らか。沖縄県民を守るため、アジアの安全保障のためにも早期に辺野古へ基地を実現させて。
・中国は日本の脅威になりつつあり、辺野古移設は沖縄の安全保障のためにも役に立つと思うので、受け入れるべき。県外移転は抑止力の低下につながる。
〈普天間飛行場の固定化回避〉~普天間の危険性の除去を~
・最善策は国外移設。次善策は県外移設だが、現状では無理で普天間飛行場の危険は解消されないため、次々善策は辺野古になると思う。
・普天間に隣接する学校を、基地騒音から早く解放すべき。
・早急に辺野古に移設して、普天間の危険を除去することを強く希望する。
〈地域振興、経済効果等〉~経済発展のために~
・名護市に若者がとどまり、活気を維持していく最大のチャンス。
・何も決められない状態で年月がたつことが最大の損失。推進によって地元に潤いとその利益を地元の人、子供たちに還元しなければならない。美しい自然の維持と開発を両立させるような施策を望む。
・普天間は基地があって人口が増え、経済が活発化してきた。名護市もおそらく仕事も増え、人口も増加し経済発展が期待できる。
以上が主な意見であり、他にもさまざまな意見をいただいたが、本章冒頭でも述べたように、そのほとんどが「代替施設受け入れ反対」の声であり、これだけ多くの市民の声を得たことを踏まえると「辺野古の海にも陸にも新たな基地は造らせない」という姿勢に間違いはないと確信した。
むすびに
名護市では平成25年9月に「名護市環境基本条例」が議決されました。その中で「誰もが先人たちから受け継いできた豊かな環境によってもたらされる恩恵を享受し、良好な環境の中で生活を営む権利を有しているとともに、自然環境の保全および生活環境の創造によって、良好な環境を次世代へと継承する責務がある。」と「環境権」があることを宣言しています。名護市民はその「環境権」のもと、良好な環境の中で生活する権利を有し、それを次世代に継承する責務があります。
私たち県民は、68年にも及ぶ米軍基地および軍人・軍属による事件・事故等の危険・不安にさらされ、人権をも脅かされる生活を強いられてきました。これらの不合理・不条理さは既に我慢の限界を超え、異常事態と言わねばなりません。いくら国防と言えども、一地域に犠牲を押し付け、地域住民の声を無視し、蹂躙(じゅうりん)することがあってはなりません。
これまで述べたことから、今を生きる大人が悔いのない選択をすること、未来へ正しい選択を示すことで、未来を担う子どもたちへの道しるべとなるものと確信します。
よって、市民生活の安心・安全、市の財産である自然環境の保全、未来を生きる子どもたちのため、そして私たち名護市民の誇りをかけて、「普天間飛行場の辺野古移設」に断固反対する、これが名護市民の強い決意であります。