「琉球芸能の力」描く 喜劇「五月九月」


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組踊の舞台を強行し混乱に陥る踊奉行ら=3日、浦添市の国立劇場おきなわ

 琉球芸能大使館制作の喜劇「五月九月(ぐんぐぁちくんぐぁち)」(富田めぐみ脚本・演出)が3日、浦添市の国立劇場おきなわであった。中国と薩摩藩への両属状態にあった琉球国の踊奉行をコメディータッチで描き、時代の荒波を越えてきた琉球芸能の力を表現した。田場珠翠が筆文字アートを描いた変幻自在の舞台美術パネルが、場面転換で効果を発揮した。

 県文化振興会の「沖縄芸能マグネットコンテンツ舞台公演」の一環。
 宇座仁一演じる踊奉行と部下たちは、中国の冊封使を迎える9月のうたげと、5月に予定していた薩摩の役人をもてなすうたげをダブルブッキングしてしまう。「九月(くんぐぁち)」と「五月(ぐんぐぁち)」を聞き間違えたのだ。「ちゃーさびーが、ちゃーさびーが」というコミカルな歌と群舞で一気に観客を引き込む。
 踊奉行らは急きょ両方のうたげを決行。二つの舞台を掛け持ちするドタバタの随所に、「恩納節」の女踊や、琉球から薩摩への道程を描いた二才踊「上い口説」などを盛り込んだ。今も昔も変わらない舞台への真剣な思いがにじむ。
 6枚のパネルは組み合わせで形が変わる。冊封使歓待の場面では御冠船踊の舞台に、薩摩の役人をもてなす場面ではびょうぶになった。最後は平面に並べ、パネルに描かれた「風」「龍」の筆文字アートを浮かび上がらせた。ただ、プログラムを読まないと何の文字か分からない。舞台を見るだけで理解できる方が親切ではないか。
 その他の出演は嘉陽田朝裕、川満香多、玉城匠、上原信次、比嘉大志。地謡は花城英樹、高宮城実人、與那國太介、横山太陽。N・Sバレエ団がオープニングアクトを務めた。「五月九月」は来年1月19日に同劇場で再演する。
(伊佐尚記)

※注:の「高」は旧漢字