宮城島のPCB施設計画問題 活性化へ区長推進 住民説明なく、企業が県申請


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 【宮城島=うるま】うるま市与那城の宮城島でポリ塩化ビフェニール(PCB)の中間処理施設の立地計画が浮上している問題で、島内三区と事業を計画するMIT(宮城島イノベーションテクノロジー)社が、11月の住民説明会で「(土地の)開発行為の同意を得たい」と説明していたにもかかわらず、7月には県に開発行為を申請していたことが明らかになった。説明会から1カ月が過ぎた今も新たな説明会はなく、地元住民からは「区長だけで話を進めているのではないか」と疑念の声も上がっている。

 計画では低濃度(微量)PCB廃棄物の処理施設となっており、県外企業から技術提供を受け、光触媒洗浄液でPCBを無害化し、分離する新技術を用いる予定だ。しかし技術は環境省が審査中で、認可されるまで実用化はできない。
 島への立地計画が持ち上がったのは昨年末ごろ。用地は池味区に隣接する宮城区内の干潟埋め立て地で、土地の所有権は上原区と同区の個人にある。申請には地権者の同意のみで住民の同意は必要ない。
 計画が進められてきた背景には島の住民の高齢化や過疎化に対する区長らの強い懸念と企業誘致による活性化への期待がある。説明会開催前の段階で上原区の北野勲区長は、「企業が来ないと不法投棄の島になる。公害がなければ考える余地がある。活性化につながる」と話していた。
 説明会は、前日に同社から中止の申し出があったが、「住民の意見を一度集約したい」との区長らの意向で予定通り行われた。終了後、池味区の登川俊充区長は「立地ありきではない。住民の合意形成が大前提。次回はきょう出た質問や意見をくみ取ってしっかりやりたい」と語っている。
 宮城島近海は全国一の生産量を誇るモズクの漁場だ。近年、市は隣島の伊計や海中道路など島しょ地域全体を考えた観光振興にも力を入れており、市議会12月定例会の一般質問では立地への懸念の声が相次いだ。
 島袋俊夫市長は「市の環境ビジョン、地場産業の振興の観点から大変有望な地区だ。企業の立地は、あらゆる事案を想定しながら情報を収集し、対応したい」と計画には慎重な姿勢だ。
 住民や市当局が計画の妥当性を判断するためにも、県に開発行為を申請した経緯を含め、同社と区長らは早急に説明責任を果たす必要がある。
 (真栄城潤一、東江亜季子)

施設の立地、事業実施までの事業者の主な手続き
PCB濃度による処理区分と処理事業所数