米研究者、日本に指南 「不承認なら交付金停止を」


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ブルース・クリングナー氏

 【東京】米政府の政策決定に大きな影響力を持つワシントンの保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」が17日に発表した評論で、仲井真弘多県知事の埋め立て承認の判断を控える米軍普天間飛行場移設問題について、「知事が承認しないなら、東京(日本政府)は2014年度予算で沖縄への交付金を取り消すべきだ。そうすれば沖縄は経済的苦境に陥るだろう」と日本政府に“指南”している。

 本紙の取材に対し、著者の同財団上席研究員で、元中央情報局(CIA)上席分析官のブルース・クリングナー氏は「日本政府高官も私の提言に感謝し、普天間問題の行き詰まりを解決するために活用することを望んでいた」と述べ、日本政府の沖縄対策に反映されているとの見方を示した。
 同氏は「日本が沖縄の海兵隊基地で約束を果たすべき時が来た」とした評論で、(1)14年度沖縄振興関連予算は埋め立て承認に署名することが条件(2)沖縄の国会議員5人を含む自民党が方針転換したのは、仲井真知事が普天間移設を承認することを信じての行動(3)プランBはなく、代替施設建設を拒否すれば普天間は恒久的に存続する―などと指摘した。
 さらに「日本政府は仲井真知事に対して非公式に14年度(沖縄振興)予算が承認の条件だと強調すべきだ。不承認は補助金凍結の引き金になり、沖縄は経済的苦境に直面するだろう」とし、沖縄を事実上“恫喝(どうかつ)”するよう要求している。
 日本政府は、県の要求を上回る3460億円を確保した14年度沖縄振興予算について、表向きには「振興は振興だ」(山本一太沖縄担当相)と関連を否定している。だが、山本氏は20日の会見で知事が「不承認」とした場合の交付金の凍結や減額の可能性について「承認、不承認の想定は考えていない。今の趣旨のことは考えていないのでお答えできない」と言及を避けた。今後、米側の保守勢力の要求を受けて、県側に圧力を強める可能性も否定できない。
 クリングナー氏は、沖縄振興予算を条件にすることは沖縄と日本政府の関係をより悪化させるのではとの本紙の質問に対し「日本政府に承認を期待させて14年度予算で金額的な譲歩を引き出したのは仲井真知事だ」と反論。「仲井真知事に伝えたいことは、承認すれば複数の米軍施設が返還されるが、不承認なら普天間は現状維持にしかならないということだ」と強調した。