辺野古 新型の軍港に 県「岸壁」主張 識者ら「既に機能保持」


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 辺野古新基地の軍港機能を否定する県土木建築部に対し、軍事に詳しい識者は“ホワイトビーチ並み”の軍港機能を指摘する。東京都内の病院に入院している仲井真弘多県知事の「不承認」を求め、都内在住のウチナーンチュや県外出身学生らは「政府の圧力に屈しないで」「無理やり基地を造られたら悲しい」などと声を上げた。絶滅にひんする国の天然記念物ジュゴンを守るための米訴訟も動きだした。辺野古の暮らしと自然を守れ―。仲井真知事に、市民の声援が送られている。

 辺野古埋め立て申請書で判明した272メートルの係船護岸や斜路(スロープ)設置などによる新基地の軍港機能について21日、申請書審査中の県土木建築部はこれを否定し、「審査への影響はない」とした。在日米軍基地に詳しい識者は、新基地はうるま市の米海軍ホワイトビーチ同様に「米軍港湾としての補助的な支援機能を持つ」と説明する。山口県の岩国基地沖合移設時に係船護岸建造が突然“後出し”された経緯を振り返り、「不足する設備は米軍の将来的な運用の中でいくらでも追加され得る」と指摘している。
 本紙の取材に県土木建築部は「冬場の波の高さ」「波の影響を軽減する防波堤のような施設もない岸壁で、港の形態を持たない」などと軍港機能を否定している。
 在日米軍活動を監視する市民団体リムピース編集委員の篠崎正人さんは、県内には現在、長期停泊の可能な本格拠点軍港としての那覇軍港と、補助的な荷役機能を果たすホワイトビーチの2種類があるとする。4万トン級の強襲揚陸艦や原子力潜水艦の寄港地であるホワイトビーチは、中城湾に2本の桟橋が突き出すだけで、防波堤などはない。一時的寄港なら、気象や海象にさほど左右されないからだ。
 篠崎さんは「県内の米軍に今ないのは飛行場と隣接した港湾機能だ。米軍はこれが造れるだけで万々歳だ」と強調する。那覇軍港やホワイトビーチでもない新たなタイプの軍港となる。
 飛行場と港湾を持つ点で新基地と岩国基地は類似する。2万トン級の船舶利用計画しか分からない埋め立て申請書からは、係船の強度は不明だが、あらかじめ強度を高く整備すれば、より大きな艦船の寄港が可能だ。係船強度が分かっていない岩国基地には昨年、オスプレイ12機を積んだ4万トン級の輸送船が寄港した。少なくとも4~5万トンの係船強度が確認された。
 また辺野古新基地計画には、ホワイトビーチのような艦船向けの給水設備や高圧電気供給設備といった支援施設がない。だがホワイトビーチの高圧電気供給設備も運用途中で建設された。県の軍港機能否定について、篠崎さんは「軍港と呼ぶか呼ばないかの違いだが、軍の荷役機能を持つ岸壁があることに何ら変わりはない」と話した。