【島人の目】フランスの家族政策


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 参議院議員の糸数慶子氏が少子化対策、子育て環境について学ぶためフランス・パリを訪れたころ、私は妊娠8カ月の妊婦だったということもあり、視察内容は私にとって非常にタイムリーな話題だった。少子化対策が功を奏している国としてたびたび取り上げられるフランスは2012年に出生率は2・01人となり、その数値はさらに増加するといわれている。

 フランスに在住し40歳の高齢出産でことし男児を出産した私が、現地での妊娠、出産、育児の取り巻く環境を自身の体験を通してここに書きたいと思う。日本では子どもをつくることを考えたとき、何より親側の経済状況を検討しなければならない。子どもはお金が掛かるというのが通念だ。しかしながらフランスではそうではない。子どもを産むことが経済的な負担になるという考えはなく、むしろ子どもが増えれば増えるほど税制上も、制度上の手当も非常に有利になるシステムになっている。
 そんな中、私たち夫婦も子どもを望んでいたがなかなかできず、不妊治療を受け、妊娠することができた。保険外で高額の日本とは異なり、フランスは年齢制限などはあるものの不妊治療を無償で受けることができる。もちろん不妊治療のみならず、出産後、産休、育児休暇後も問題なく仕事に復帰できるように法律で守られており、復帰後は条件に合わせて保育サービスも選択できる。しかもそのどれも基本ほぼ無料か、もしくは有料であっても手当や税金の控除対象などで経済的な負担が掛からないようになっている。
 女性であっても仕事を諦めることなく子どもを産み育てることが可能なフランス。そのこともあってか中には妊娠後必ずしも結婚という形を取らずに、婚外子の形で子どもを産む人も多い。実は私の義理の妹も結婚せずにパートナーとの子どもを2年前に産んだ。婚外子であることで社会的差別を受けることがなく、制度上、手当や保障も嫡子と同様であるため、ちゅうちょする理由がなかったとのことだ。
 いかなる形の家庭であっても平等に受け入れられているという安心感と、子を産み育てる母親の環境をしっかり守る手厚い制度があるという信頼感。これが出生率を上げている理由なのは間違いない。このようにフランスの家族政策に関しては日本が見習うべき部分が多々あると思う。もちろんお金が掛かることだが、少子化対策は本来なら他の何を差し置いてでも優先すべきことではないだろうか。なぜなら生まれてくる子どもたちこそが将来日本の財政を支える納税者となるのだから。
(大城洋子、フランス通信員)