『ドラッグ・ウォー 毒戦』 早くも出ました2014年No.1


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 文句なしの傑作! ハリウッド映画がブルース・ウィリスやシルベスター・スタローンらご老体を引っ張り出し、最新技術をフル活用してアクション映画を無理やり作っている中、脚本と演出力で見せ切ってしまう。香港ノワールの雄ジョニー・トー監督の神髄を見たり。

 とはいえ今回は、トー作品初の中国ロケ敢行で、中国政府との水面下のバトルが相当あったようだ。何せ扱っている題材が、中国にはびこる巨大麻薬組織VS.中国公安警察の攻防戦。先ごろ、日本の市議会議員が覚せい剤所持容疑で逮捕されたニュースが流れたばかりだけに、本作で描かれていることが、決してフィクションではないことが分かるだろう。そんな中国の闇に、ジャン警部率いる潜入捜査官がグイグイと迫っていく。
 圧巻はそのジャン警部役スン・ホンレイのカメレオンアクターぶりだ。潜入捜査のために様々な売人に扮し、時に相手を信用させるためにオーバードース覚悟で麻薬を吸引してみせる。そして脇を固めるのは、ラム・シューらトー作品の常連俳優たち。主演のルイス・クー以外、さえないおっさん俳優ばかりだが、トー監督の手にかかると皆、渋くてかっこ良く見えちゃう。さすがだよ、スゴイよ、トー監督。早いけど、筆者の2014年のNo.1作品出ちゃいました。★★★★★(中山治美)

 【データ】
監督:ジョニー・トー
撮影:デヴィッド・リチャードソン
出演:ルイス・クー、スン・ホンレイ、クリスタル・ホアン
1月11日(土)から全国順次公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

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中山 治美