辺野古移設、国が代執行など検討 名護市長権限を制限


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 【東京】米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、名護市の稲嶺進市長が市長権限を行使して移設を阻止する考えを示していることを受け、政府が市長権限を制限するため是正措置や行政代執行などを検討していることが分かった。ただその効力には限界がある。

 移設作業に伴う漁港使用許可などは、国の代理で行政手続きを行う「法定受託事務」ではなく、地方自治法で定める自治体の事務区分の一つである「自治事務」で、国による代執行は認められていない。
 政府が国の方針に従うよう県を通して是正を要求することは可能だが、現段階で名護市が従う可能性は低い。国は違法確認訴訟を起こすこともできるが、仮に訴訟で違法が確定した場合も罰則規定はなく、法的拘束力もない。政府は「名護市長の権限は限定されている」(菅義偉官房長官)としているが、対応に苦慮しているのが実態だ。
 総務省は取材に対し「市が事務手続きを行わない場合、所管省庁の担当大臣の判断で県を通じて是正要求する可能性もある」と説明。「手続きとしては、八重山の教科書問題で文部科学省が県教委を通じて竹富町への是正要求を指示したものと同じだ」とした。
 仲井真弘多知事は昨年末に移設に向けた埋め立てを承認したが、「県外移設の公約は変えていない」と主張している。政府が県に名護市への是正要求を指示した場合、知事の判断が問われることになる。
 移設作業では、名護市の合意なしで辺野古漁港と接する辺野古川の護岸かさ上げ工事ができないほか、文化財保存でも市教育委との協議が求められる。