台湾は「被害認定を」 1947年2・28事件


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青山 恵昭さん

 1947年に台湾で推計2万人以上の死者を出した「2・28事件」に巻き込まれた県出身犠牲者の遺族が29日に「沖縄被害者の会」を結成する。事件関係者の高齢化が進み、事実検証が難しくなる中、関係者同士の連携を深めて情報収集し、台湾政府に県出身者の被害者認定を求めることを目指している。

 2・28事件の県出身犠牲者について調査した「台湾228事件沖縄調査委員会」(代表・又吉盛清沖縄大教授)によると、県出身者約30人が同事件に巻き込まれて死亡したとみられているが、詳細は分かっていない。同委員会の聞き取り調査によって現在までに判明した県出身犠牲者は4人。
 台湾政府高官が2012年に沖縄を訪れ、遺族2人に聞き取り調査を行っているが、県出身者への被害者認定と補償は現在まで実施されていない。
 被害者の会結成準備会の世話人を務める青山恵昭さん(70)は「台湾政府から県出身者の遺族に対しまだ謝罪の言葉はない。事件の真相を究明し、補償問題を解決することが犠牲者への弔いになる」と語る。
 青山さんの父・恵先さんは、日本敗戦後に鹿児島から台湾に母子を迎えに行き、事件に巻き込まれて行方不明になった。他の3人の県出身犠牲者も、戦後に闇船で八重山から台湾に財産を取りに戻り、消息を絶った。いずれも事件関係者の証言で判明した。
 事件からことしで67年を迎える中、関係者の高齢化で、事件の真相究明が難しくなっていることに遺族は危機感を強めている。青山さんは「関係者の高齢化で被害者認定の申請に必要な資料の提出が難しくなっている。早急に情報収集をしなければならない」と話した。
 29日午後2時から那覇市の県男女共同参画センターてぃるるで結成会が開かれる。沖縄大学の又吉教授が「2・28台湾最新事情」と題し特別講話を行う。同会は事件関係者や賛同者の参加を呼び掛けている。資料代300円。問い合わせは青山さん(電話)090(1947)8179。(赤嶺玲子)

<用語>2・28事件
 1947年2月28日、台湾台北市での警官の発砲事件をきっかけに、台湾全土で本省人(台湾在住の人々)による国民党政府や外省人(日本敗戦後に中国大陸から台湾に渡ってきた人々)への抵抗運動が広がった。これに対し国民党政府は武力による大規模な弾圧を行い、推計2万人以上の死者が出たとされるが実数は明らかでない。47年当時、多くの県出身者が引き揚げることなく台湾にとどまったり、八重山と台湾間を行き来したりしていたことから、事件に巻き込まれた。